梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

「ここまでわかった新型コロナ」(上久保靖彦、小川榮太郎・WAC・2020年)要約・27・《■カットオフ値が決め手だ》

■カットオフ値が決め手だ
【上久保】カットオフ値をどう設定するかというのは非常に大切な事だ。カットオフ値というのは、分割点、または病態識別値と言う。検査結果の陽性と陰性を判別する数値だ。カットオフ値から上が陽性で、下が陰性という判定が出る。ウィルスの場合は、その判定を検査キットにさせる。その基準値がカットオフ値だ。
【小川】要するに。病気と認められるかどうかということか。かなり多くの人が、検査というものは絶対に正しい、白と黒が100%わかるものだと思っている。PCR検査もカットオフ値がどう設定されているか分からないまま使っても意味がないのではないか。
カットオフ値は実際にはどのように設定されるのか。
【上久保】カットオフ値の決め方というのがある。「免疫を獲得した人抗体価分布の一例」と「免疫を持たない人の抗体分布の一例」を合わせると、陰性で抗体を持っていない人と陽性で抗体を持っている人で、交わるところがある。LowとHighと書いてある。その間でカットオフ値をとる。どちらに近づけるかで、感度と特異度に影響が出る。感度とは、本当に感染している人が陽性にに出るパーセンテージ、特異度とは感染していない人が陰性に出るパーセンテージだ。両方が適切になるように、最適な値を我々研究者が設定するということだ。カットオフ値をHighのほうにすると特異度は高くなるが感度は低下する。反対にカットオフ値を低くすると、感度は上がるが特異度は低下する。
【小川】陽性、陰性がどちらもきちんと出る値を人間が決めるのか。
【上久保】そういうことだ。
【小川】そうすると、疾患群と非疾患群がわかっていないと決められない。
【上久保】そうだ。低い値と高い値の分布を見て、それから陰性の症例について見る。その間のカットオフ値を一番適した値で採用する。そのキットで計ると、抗体が陽性とか陰性ということが設定された値に従って出るわけだ。
【小川】この9か月、様々な国の企業が抗体キットを開発して、軒並み低い抗体値が出ている。精度が低いという問題と、カットオフ値を定める際にIgGが既感染パターンを示している事が考慮されていないものばかりという気がする。PCR検査も乱立状態だ。検査精度、検査技術、カットオフ値はどうなのか。検査キットを公認するシステムもないままに、なし崩し的にばらまかれている。検査精度を国が立ち入りで検査もしていない。

【感想】
・抗体検査やPCR検査で「陽性」か「陰性」かを判別する基準をカットオフ値と言う。その値は人間が決めるので、結果がバラバラになることがあり得る。事実、PCR検査のCT値は「32」が適切とされているのに、日本では「45」で行っているという。全く《いい加減》《恣意的》で「検査」に値しないことがまかり通っていることになる。専門家の見解がバラバラ、為政者も制御不能だとすれば、一般の国民は何を信じればよいのだろうか。全く先行き不透明な毎日だ。
(2021.2.15)