梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

「ここまでわかった新型コロナ」(上久保靖彦、小川榮太郎・WAC・2020年)要約・29・《■危機を煽る専門家とは何者か》

■危機を煽る専門家とは何者か
【小川】専門家は、一人ひとりがたこつぼの自分の知識を持っているので、トータルな、ザクッとした理解が妨げられている。
【上久保】全体が分からないと、マクロの現象は見えてこない。遠近法が取れないから。【小川】当初、ウィルスが変異をして危険な症状が出ていた。これは武漢の情報だった。普通のコロナではあり得ない突発的な肺炎が1日で進行してしまう例などについて様々な議論があり、超一流の専門家ばかりだから、個々の議論は正確だが、上久保先生は、病院で現場にいると、わけのわからない形で、突然人が亡くなる事などよくある、その劇症化がメジャーかマイナーかが大事だ、という話をした。
【上久保】新型コロナでは、マイナーなことをメジャーにしてしまった。それぞれの専門家が、たった一例の症例報告を全ての症例でそうであるかのように考えてはならない。一例でも大切だが、それはあくまでも極めて稀だから、世界で数例かもしれないから、症例報告をするのだ。いずれにせよ、既に免疫を持っていれば悪化することはない。ウィルスはテーブルにも服にも感染する。PCR検査をやればみんな陽性に出る。
【小川】PCR検査というのは、発症や感染の重度を示すものではなく、その時検査した場所にウィルスがいるかいないかを示すだけで、そのまま医療的指標に使えるわけではない。
【上久保】そうだ。今、検査、検査で騒いでいる人のロジックでは、付着していれば「感染」と言うのだから、机も感染していることになる。
【小川】そういう基本的な認識、常識を全部すっ飛ばして危機を煽っている専門家なる人たちは、一体何者なのか。
【上久保】思い込みになっている。三密ということで、透明な板を置いたらいいというのもひどい話だ。本当にやる場合は、刑務所の面会みたいに、隅々まで完全に遮断しないと意味がない。驚くのは、こうした「対策」なるものをサイエンティストが本当に信じたりしていることだ。
【小川】ウィルスというものを、人間的なサイズに置き換えてしまっている。
【上久保】切実なのは病院だ。病院で、自分らは危ないと言われるお年寄りが結構いる。その人たちは、毎日、散歩して人としゃべって、元気にやっている。そういう人は免疫を持っている。だから大丈夫なのだが、社会が不安を煽るから心配ばかり募る。病院側も老人に対してナーバスになっている。


【感想】
・今日(2021年2月15日)の「産経新聞ニュース2/15(月) 6:55配信」に《 普通の会話の数分後に急変 新型コロナの恐るべき特性 神奈川で相次ぐ療養中の“突然死”》というタイトルの署名入り記事が載っている。その内容は以下の通りだ。


 新型コロナウイルスの感染が拡大する神奈川県で、軽症・無症状の感染者が自宅や宿泊療養施設での療養中に死亡する事例が相次ぎ、医療関係者が危機感を募らせている。保健所の担当者らは患者の“突然死”を防ぐため、監視体制の強化に努めているが、感染者が増え続けるなかで、業務に手が回らなくなっている現状もあり、ジレンマにさいなまれている。(外崎晃彦)


 神奈川県内の保健所などによると、「第3波」とよばれる感染拡大のなか、昨年12月以降、軽症や無症状と診断され自宅や宿泊療養施設での療養中などに容体が急に悪化し亡くなった事例が、少なくとも計7件起きている。それ以外にも、自宅で死亡が確認されてから陽性が確認されるといった事例もあり、患者本人や周囲が気づかないまま病状が進行し容体が急変することがあるというこの病気の恐ろしい特性を浮き彫りにしている。


 ■既往症なくても


 関係者に衝撃を与えたのが1月9日に県が発表した、大磯町の70代女性が亡くなった事例だ。女性は昨年12月31日にせきなどの自覚症状が現れ、その後PCR検査を受け、年明け後の1月6日に陽性が判明。7日、自宅で容体が急変し、救急搬送先の医療機関で死亡した。


 県担当者が驚くのはその急変ぶりだ。「同居家族と普通に会話をしていて、家族が別の部屋に行って戻ってくるそのわずか数分の間に意識を失っていたようだ。ついさっきまで元気にしゃべり、受け答えができた人が突然、倒れてしまった」という。この女性に既往症はなかった。


 既往症がないにもかかわらず、自宅療養中に亡くなった事例は他にもある。1月28日に県が死亡を発表した伊勢原市在住の50代男性だ。17日にせきや喉の痛みなどの自覚症状が現れ、18日に検査して陽性が判明。「療養期間」の終了を翌日に控えた26日、自宅で死亡した。死因は「新型コロナウイルス肺炎に伴う脳出血」。自宅を訪れた親族が死亡している男性を発見した。


 ■無症状があだに


 横須賀市の担当者は同月23日に市が発表した市内の飲食店に勤める60代女性の死亡事例に胸を痛める。この事例では、19日に女性の同居する70代男性の陽性が判明。女性は翌20日午後に検査を受ける予定だったが、当日の午前中に自宅で死亡した。


 女性には既往症があったが、発熱などの症状はなく、倦怠(けんたい)感があった程度。市の担当者は「逆に高熱や息苦しさなど、強い訴えが必要な状態だったならば、結果は違っていたかもしれない」と悔やむ。結果的に無症状だったことが、あだとなってしまったことに複雑な思いを抱いていた。


 県では、患者のこうした突然の死を防ぐため、療養者らに対してスマートフォンアプリのLINEを使い、1日2回、体温や体調の変化などの状況報告をしてもらっている。ただ、それでも防ぎきれないのが現状だという。


 県の担当者は「常に患者を見ることはできず、監視のはざまで、脳卒中のような一分一秒を争う何かが起きてしまうこともあり、予防は困難を極める」とする。その上で「できる範囲で最善を尽くすしかない」と話している。


 ■救急体制利用を


 県内の新型コロナの感染状況をめぐっては、昨年11月ごろからの「第3波」によって感染者が急増。1週間当たりの新規感染者数は、昨年12月の第1~4週が1千~2千人台で右肩上がりで推移。1月第2週(5910人)と第3週(5635人)には6千人に迫った。


 こうしたなか、感染者一人一人のケアや監視体制も逼迫(ひっぱく)し「手が回らず、すでに限界に近い」(関係者)。県では黒岩祐治知事を筆頭に「市中感染の拡大をなんとしても防ぎ、少しでも新規の感染者を減らしていくこと」に力を入れてきた。


 一方“突然死”の防止策として救急体制の利用を推奨している。療養中の患者や家族には「少しでも息苦しさなどを感じたら、遠慮せずすぐに救急窓口(県設置の『コロナ119番』)に連絡してください。場合によっては(一般の)119番でもかまいません」と呼びかけている。


 以上の記事で特徴的なことは、「コロナは恐ろしい病気である」という印象を強調するために、「突然死」の症例を《列挙》していることだ。その内容に「嘘偽り」はないだろうが、そうした事例がどれくらいの割合で生じているか、についても触れなければ「真実の報道」とは言えない。コロナによる死者のうち「突然死」は何パーセントなのか、半数を超えていれば、記事にする価値があるだろう。しかし、数パーセントに過ぎないとすれば、不安をことさら煽り立て「読者を増やそうとする」、新聞社の魂胆が垣間見える。「突然死」は未然に防ぐことができないから「突然死」なのだ。いくら騒ぎ立ててみたところで「予防」はできずに、ただ「恐れおののく」だけである。もはや脅迫のための記事という他はない。