梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

「ここまでわかった新型コロナ」(上久保靖彦、小川榮太郎・WAC・2020年)要約・11・《第三章 上久保ー高橋「集団免疫説」とは》

《第三章 上久保ー高橋「集団免疫説」とは》
■ピークを過ぎると死者数がつるべ落としに
【小川】結論から言うと、集団免疫が達成されて、初めてコロナウィルスの感染拡大、重症者・死者が殆どいなくなるという考えか。
【上久保】そうだ。7月14日の時点での、ヨーロッパの人口百万人あたりの新型コロナウィルス死者数推移のグラフを見ると、全ての国がピークアウトして、現在収束に向かっている。最初の死者が出てからの約1~3週間は、ロックダウンの時期に関係なく、欧州の(グラフに出ている)全ての国(イタリア、オランダ、スイス、ルクセンブルグ、ポルトガル、アイルランド、フランス、イギリス、スウェーデン、ベルギー、スペイン、ドイツ、オーストリア)がほぼ同じような弾道軌跡で増え続けている。北米アメリア、カナダも同じようなパターンだ。最初の1~3週間で人口百万人当たり約10人の死者数に達した後は、早期にロックダウンした国から順に収束に向かい、1週間毎の死者数も少なくなる傾向が認められる。例外としてベルギーはオランダより早くロックダウンしているが、人口百万人当たりの死者数は最も多くなっている。最も遅くロックダウンしたアイルランドは、比較的早くにロックダウンしたオランダとほぼ同じ弾道軌跡をたどっている。ロックダウンをしていないスウェーデンも他の国と同様に収束しつつあるが、人口百万人当たりの死者数はイタリアと同じぐらいになっている。ロックダウンするしないに関係なく、ウィルスの感染拡大と収束のパターンが決まっていて、ピークアウトする。
 人口百万人当たりの1週間毎の死者数が最大になるまでの日数は、1か月から1か月半だ。最初の死者が出てから1~3週間の初期の死者数の急速な増加パターンは、一部を除き他の地域の国々では日本同様、ヨーロッパ諸国ほど高い山になっていない。
【小川】今回の新型コロナウィルスは世界各国において、死者の数に大きな差があるが、あるピークまで行くと、必ず突然、つるべ落としのようにパタッとなくなる。
【上久保】そうだ。アジア諸国の数値はいずれもヨーロッパよりも小さいが、ヨーロッパだけを見ても収束するまでの期間に大きな差がある。ロックダウンは医療のキャパシティを超えないようにするためだが、感染伝播期間は長引き、死亡者がなくなるまでの期間も長期化する。
【小川】8月になっても死者数が落ちず増加が止まらなかった国もある。南米諸国のブラジル、メキシコやインドなどについてどう見るか。
【上久保】まだ集団免疫に達していないのだと思う。もしくは達していても、人工肺や人工呼吸装置が不足するするなど、各国別の詳細は検討しないとまだわからない。実際に検証しないとわからない。
【小川】世界でも冷静な議論ができる状況にまだなっていないと言えるだろう。 確認したいことは、①どの国でも、ある段階で急激にピークアウトしているという事、ここにはメカニズムがあるのではないか、②同じパターンを踏んでいるが、死者数に大きな差が出ているのはなぜか、ということだ。


【感想】
・上久保氏は「1~3週間で人口百万人当たりの死者数が約10人に達した後は、収束に向かう」と述べている。2021年1月現在、日本の人口は1億2700万人だから、1週間当たりの死者増加数が約127人を超えれば収束に向かうのだろうか。現在は多くて1日当たり100人程度だから、とうに超えており、収束に向かっているはずだが・・・。とにかく、《1~3週間で人口百万人当たり10人》という数値が、ピークアウトのポイントだということはわかった。
・現在、拡大に向かっているのか、収束に向かっているのか、根拠を示して国民に説明することが政府、専門家、メディア関係者の責務ではないだろうか。
(2021.1.28)