梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

「ここまでわかった新型コロナ」(上久保靖彦、小川榮太郎・WAC・2020年)要約・7・《■十年に一度くらいスパイクが変異する》

■十年に一度くらいスパイクが変異する
【小川】ウィルスにも大別して二種類ある?
【上久保】はい。生物の遺伝子、ゲノム核酸にはDNAとRNAがあり、DNAを持つDNAウィルスと、RNAを持つRNAウィルスに分けられる。DNAは人を含むあらゆる生物の遺伝情報を保持して伝える分子だが、このDNAに突然変異が起こった時に、生物はそれを修復する機能を持っている。DNAウィルスは変異が起こりにくいウィルスだ。天然痘ウィルスはDNAウィルスなので、一度開発したワクチンが長期にわたって効果を発揮し、天然痘を撲滅することができた。インフルエンザウィルスやコロナウィルスはRNAウィルスで、誤ったコピーが発生しやすい。つまり変異が起こりやすい。
【小川】非常に変異しやすいから、何度もかかる?
【上久保】インフルエンザとコロナに関してはそう言える。
【小川】どういう理由から、繰り返し感染する?
【上久保】ウィルスにはスパイクタンパク質という棘みたいなものがある。一方人間の中の組織のACE受容体が鍵と鍵穴の関係になっている。コロナウィルスの構造は、N抗原など中心部とACE受容体とくっつくスパイク部分に大別される。今回、新型コロナで起きたのはスパイクの変異だ。それでACE受容体にくっつきやすくなった。
【小川】そういうことは初めてか。
【上久保】十年に一度くらいに変異が入ってきていると思う。
【小川】根拠はあるか。
【上久保】コロナの場合、過去に十分な研究がない。遺伝子情報のデータバンク(GISAID)が2008年に設立されたが、それ以前のデータはほとんどない。近年だと、SARSが2002年、MERSが2012年、新型コロナが2020年だから何かの形で周期性を追尾できるかもしれない。


【感想】
・コロナウィルスはRNAウィルスで、人間の細胞にあるACE受容体とスパイクタンパク質が結合して感染(ウィルスの増殖)がはじまる、ということは「本当はこわくない新型コロナウィルス」にも記されていたと思う。今回、コロナウィルスのスパイクタンパク質が変異して「感染しやすく」なった、ということである。ウィルスが体内(鼻や喉、胃や腸)に入った(付着した)だけでは、感染とは言わない(PCR検査では陽性となるが)。ウィルスが、体内の細胞にあるACE受容体と結合し(ウィルスが細胞内に侵入し)、かつ増殖が繰り返されたとき、初めて「感染」(発熱)し、症状が現れる。症状が現れたことにより「医療の対象」になるわけで、そうした場合に「感染者」となるのではないか。しかし、現状では、ウィルスが体内に入っただけで「感染者」と認定されている。PCR陽性者のうち15~20%は「無症状」と言われているが、実際はどうなのだろうか。厚生労働省はそのデータを示すべきだと、私は思う。
(2021.1.25)