梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

「本当はこわくない新型コロナウィルス」(井上正康・方丈社・2020年)通読・17《Q 抗体検査で陽性率が大きく異なるのはなぜですか?》

《Q&A》
Q 抗体検査で陽性率が大きく異なるのはなぜですか?
A・ウィルスに感染すると1週間ほどでIgMがつくられ、その後に比較的長寿命のIgGがつくられる。コロナウィルスではIgMの血中濃度が1か月ほどで低下し、IgGの血中半減期も約36日と短いことがわかった。このために血中の抗体濃度も感染数か月後には著しく低下して測定できなくなる。これを「偽陰性」と呼ぶ。このように感染後から採血までの期間によって、同じ感染者でも抗体価が大きく変化する。
・また、抗原の種類によっても抗体の半減期が影響される可能性がある。市販の抗体検査キットで検出できる抗体の抗原特異性が異なるので、これも陽性率に大きく影響する


Q コロナウィルスに感染して抗体ができ、治癒すれば再感染しないのですか?
A・コロナウィルスに感染すると、スパイクタンパク質やNタンパク質などに対する抗体が産生される。スパイクタンパク質に対する抗体は、ウィルスを中和(無力化)して排除する。したがって、抗体ができれば、次にウィルスにさらされても感染しにくくなる。細胞性免疫でも同様の排除作用が認められる。新型コロナには無数の変異株があり、一度感染して抗体ができた一方で別の変異株に感染した症例が報告されているが、大半の場合は無症状で経過する。


Q 新型コロナの抗体は短期間で低下するので、ワクチンは無駄なのでしょうか?
A・新型コロナに対するIgG抗体の半減期は約36日と短いので、感染しても数か月後には抗体検査で偽陰性になる可能性がある。しかし、免疫力にはBリンパ球が産生する抗体だけでなく、Tリンパ球による細胞性免疫も重要であり、両者の免疫記憶が体内に保存されるので、感染後やワクチン接種後も再感染や他人に感染させるリスクは低下する。


Q 新型コロナのワクチン開発競争が世界中で加熱していますが、安全なのでしょうか?
A・現在、新型コロナに対するワクチンが世界中で169種類以上も開発中であり、その中の30種類以上が臨床治験中だ。
・多数の健常人に接種されるワクチンの開発では、極めて慎重に安全性を確保する必要があり、通常は使用可能になるまでには何年もかかる。特に遺伝子の変異速度が速いコロナウィルスでは、抗体依存性感染増強(ADE)という現象が起こりやすく、これがサイトカインストームにより病態を悪化させる可能性がある。
・コロナ仲間のSARSでは、ADEにより重症化することがわかっているのでワクチンの開発は凍結されている。新型コロナウィルスもSARSと性質が酷似しているため、ADEが起こる心配がある。
・健常な日本人には新型コロナウィルスに対する集団免疫力あるので、ワクチンは必要な職種や患者に限定して慎重に使用するのがよい。


Q 新型コロナで重症化するとどんな症状が出ますか?
A・新型コロナが内皮細胞に感染すると、内皮細胞が障害されて炎症を起こすサイトカインが大量に分泌され、免疫反応が暴走することがある(サイトカインストーム)。
・サイトカインストームが起こると、全身の血管内で血液が凝固するDICと呼ばれる血栓症になる。全身の臓器が障害されて死亡するリスクが高くなる。
・サイトカインストームは全身性の病態であり、肺のみならず腎臓、肝臓、心臓、脳などの大半の組織の機能が障害される。


Q 新型コロナウィルスの感染症ではどのような後遺症がありますか?
A・多くの場合は症状が改善して治癒すると後遺症は残らない。
・全身性の血栓症では、肺、心臓、腎臓、脳など血流障害に弱い臓器が障害されやすい。特に脳は血流障害に弱く、これが後遺症となる可能性がある。
・感染者の後遺症としては、多い順番に疲労(脳の機能障害)、呼吸困難(肺の機能障害)、関節痛、胸痛(心血管障害)、咳(肺の機能障害)、嗅覚障害などが知られている。


《第5章 まとめ》
1 「免疫弱者」(高齢者、抗がん剤治療者、生活習慣病患者など)にはリスクは高いが、一般の健康人は大半が無症状や軽症ですむ。
2 一度感染して治癒したなら、抗体が消失しても、リンパ球が「免疫記憶」を持っている。
3 ヒトは、新型コロナ「だけ」に有効な抗体を持たなくても、幅広く対応できるポリクローナル抗体でカバーしている。


4 日本人や東アジア人は、新型コロナにも対応できる遺伝的特性(HLA)を持っている可能性がある。


【感想】
・前節で、著者が「ポリクローナル抗体」や「HLA」について記述している意図がよくわからなかったが、《5章 まとめ》に至って「少し」わかった。要するに、ヒトは「ポリクローナル抗体」という“散弾銃”を持っており、また日本人には新型コロナにも対応できる遺伝的特性を持っている可能性があるので、過度に「こわがらなくてもいい」ということなのだろう。
・ワクチンについても述べられていたが、日本人は「集団免疫」を獲得しているのでワクチン接種は(特別な場合を除いて)必要ないということであった。
・この1年間の経過を振り返り、また昨今の情勢を見ると、この危機感、切迫感は、為政者、専門家、マスメディアによって「意図的」につくられているような感じがする。最終的には、国民の誰もが「ワクチンに飛びつく」ようにするための「お膳立て」ではないだろうか。「松田政策研究所」というネット番組で、徳島大学名誉教授の大橋眞氏は、ドイツ政府関連の文書を紹介していたが、その中では「いかにして国民を油断させないか、不安をあおり危機感を高めるか」が為政者、専門家の施策、対策として《最重要課題》だったそうである。日本においても「由らしむべし知らしむべからず」といった為政者の魂胆が見え見えではあるまいか。2月初旬までは「緊急事態」、それが終わると「ワクチン接種」で日本中が《まとまれる》かどうか、などと考えているかもしれない。
・コロナ騒動の茶番劇は当分終わりそうもないが、人災の被害に遭わぬよう、自分の身は自分で守らなければなるまい。
(2021.1.12)