梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

報道の《からくり》

 今日の「東京新聞朝刊」1面のトップ記事は「国内感染 最多981人」「都内も更新 新たに366人」「各地で最多 悪化傾向に」という見出しであった。要するに、国内の新規感染者は7月に入ってから再び拡大傾向にあり、7月23日には「各地」で最多を記録した、というものである。ここでいう「感染者」とは、PCR検査により陽性と判定された者だと思われるが、かつて専門家(専門家会議副座長)の一人は、「今、感染者が何人いるかは誰にもわからない」と述べた。だから、誰にもわからない「感染者」を、メディアの面々はいつまで数え続けるつもりなのだろうか、それは全く無意味だと私は思う。もっと重要な数値がある。それは「感染者」ではなく「発病者」であり「患者」だ。この数は、誰にでも(調べれば)すぐにわかる。さらに「患者」の中でも、「重症者」及び「死亡者」の数だ。
 今、それを厚生労働省のホームページに公表されている数値をもとに、調べると以下のことがわかる。


 《4月から現在までを、A:4月1~23日、B:5月1~23日、C:6月1~23日、D:7月1~23い日の4期間に分けて、数値の推移を見ると》
①陽性率(陽性者のPCR検査実施人数に対する割合)はA:9.6%、B:7.2%、C:5.1%,D:3.8%で減少傾向にある。 新規陽性者数の平均は、A:443人、B:102人、C:55人、D:366人である。新規陽性者(感染者)は4月期が最多であり5~6月は減少したが、7月に入り再び増加、4月期に迫りつつある。
②そのうち「入院治療を必要とする者」(患者)の割合は、A:76.0%、B:42.6%、C:5.8%、D:11.8%で5~6月期に減少したが、7月に入り再び増加傾向にある。ただし、4月期は76%だったが、7月期は11.8%に止まっている。新規入院者の平均人数も4月期は387人だったが、7月期は144人ほどである。
③「入院治療を必要とする者」のうち「重症者」の割合は、A:1.8%。B:1.5%,C:0.4%、D:0.1%である。「重症者」の平均人数も4月期は8.6人だったが、7月期は0.7人である。さらに、「重症者」の「死亡率」(死亡者の重症者に対する割合)はA:6.7%,B:5.7%、C:4.1%、D:1.9%で減少傾向にある。
④新規死者数の平均は、A:11.3人、B:15.8人、C:3.2人、D:0.7人で、減少傾向にある。
⑤致死率(死亡者の陽性者に対する割合)は、A:1.8%、B:4.0%、C:5.3%、D:4.5%であった。
⑥退院率(退院者数の入院者数に対する割合・累計)はA:31%、B:206%、C:158%、D:820%である。また新規退院者の平均人数はA:90.8人、B:374.4人。C:87.6人、D:191.0人であった。


 以上のうち、テレビ、新聞、雑誌等のメディアが報道する情報は、特に①、時によっては②までの数値であり、③、④、⑤、⑥の数値は《たまにしか》扱われない。なぜなら、それらの情報では、視聴率、購読料が《稼げない》からである。
 現在の状況は、「第二波」かもしれないが、「第一波」に比べてウィルスの病毒性は弱まったか、「入院を必要とする者」の数も4月に比べれば《半減》しているのである。メディアは、この時とばかり、①で国民の不安を《煽り続ける》ことに専念しているようだが、《真実の報道》は偏ってはいけない。新規「感染者数」(陽性者数)を採り上げるなら、同時に新規「患者数」、新規「要入院者数」、新規「死亡者数」、新規「退院者数」も列記もしくはグラフ明示しなければ、きわめて不十分だということになる。
 とりわけ、退院者数は4月に比べて大幅に増加しており、この疾病が「軽症のまま治癒する」可能性が高いことを見落としてはならないだろう。そのことに《あえて触れない》ようにする、報道の《からくり》に騙されないようにしたい。報道が「各地で最多、悪化傾向に」と断言する《根拠》は何か。データで示してもらいたい。
(2020.7.24)