梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

「日本国憲法改正草案・自由民主党」修正案・《6》

【第五章 内閣】
◎草案(修正該当部分)
第七十二条3 内閣総理大臣は、最高指揮官として、国防軍を統括する。


◎修正案
第七十二条3を削除する。


《解説》
・修正案においては、国防軍は存在しないので、この規定は不要である。


【第九章 緊急事態】
◎草案
(緊急事態の宣言)
第九十八条 内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震などによる大規模な自然災害その他法律で定める緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる。
2(省略)
3(省略)
4(省略)
(緊急事態の宣言の効果)
第九十九条 緊急事態の宣言が発せられたときは、法律の定めるところにより、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができるほか、内閣総理大臣は財政上の必要な支出その他の処分を行い、地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる。
2(省略)
3 緊急事態が宣言が発せられた場合には、何人も、法律の定めるところにより、当該宣言に係る事態において国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して発せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない。この場合においても、第十四条、第十八条、第十九条、第二十一条その他の基本的人権に関する規定は、最大限に尊重されなければならない。
4 緊急事態の宣言が発せられた場合においては、法律の定めるところにより、その宣言が効力を有する期間、衆議院は解散されないものとし、両議院の議員の任期及びその選挙期日の特例を設けることができる。


◎修正案
【第九章 緊急事態】を削除する。


《解説》
・草案では「我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱」「地震等による大規模な自然災害、その他」を緊急事態としており、内閣総理大臣が緊急事態の宣言を発した場合、「何人も国その他公の機関の指示に従わなければならない」とされている。
・草案の緊急事態には、人為的な社会秩序の混乱と、自然災害が含まれており、それらを並列的に(同一視)することは、条文として不適切である。
・地震等による大規模な自然災害に対しては、現行の「災害救助法」を適用すれば十分である。
・また、平和主義を標榜する「日本国憲法」が「外部からの武力攻撃」を想定することは、内外にその理念の脆弱さを示すことになる。さらに、「日本国憲法」の根幹である国民主権のもとで、三権分立制が適正に貫かれていれば、「内乱等」という社会秩序の混乱は生じ得ない。「内乱等」を恐れて、徒に「何人も国その他公の機関の指示にしたがわなければならない」などという文言を弄する前に、第十四条、第十八条、第十九条、第二十一条その他に規定された国民一人一人の基本的人権を《最大限に》尊重し、より成熟した民主主義国家を目指すことを一義としなければならない。
(2016.7.22)