梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

私家版・昭和万謡集・10・「流浪歌」

10 「流浪歌」(詞・吉田旺 曲・徳久広司 歌・徳久広司) 
 遠藤実も船村徹も元は「流し」の演歌歌手、徳久広司もまた「歌手」出身の作曲家である。志破れて都落ちする男の心情を切々と歌い上げる歌唱力は本物であり、歌手としても輝いている。ところで、この男が歌う「流浪歌」とは何だろうか。昔、「流浪の旅」という歌があった。「流れ流れて落ち行く先は、北はシベリア、南はジャバよ・・・」時代は大正末期、大陸に夢を求めてさまよい歩く姿が浮かぶ。昭和の男もまた、都を落ち延びてフィリピンや台湾あたりをさまようのだろうか。他国の空で星を眺め「瞼閉じれば故郷が見える」。その一瞬、「はてなき海の、沖の中なる、島にでもよし、永住の地欲し」と泣き崩れたか・・・。この歌には、一貫して「女の影」は見当たらない。
(2023.10.24)



流浪歌(たびうた) ♪徳久広司 ~歌は人生~