梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

「夏休み子ども科学電話相談」・《トビハゼのアクビ問答》

 私はほぼ10年前、以下のような雑文を綴った。〈「わくわくラジオこども電話科学相談担当者」様  毎日午前中に放送されている「わくわくラジオこども科学電話相談」(NHK第一)を聞いていて,気になることは「先生」と呼ばれている大人達の言葉遣いである。はじめは丁寧語を遣っていたかと思うと,急になれなれしく「ウン」「・・だ」「・・なぁ「・・よ」「・・さぁ」「・・ねぇ」等の言葉を連発しはじめる。子どもに親しみやすく,わかりやすい説明を心掛けているつもりだろうが,相手が丁寧語で話している場合は聞き苦しい。ラジオという公共の場で「対話」しているのだから,「先生」には正しいスピーチ・マナーが要求される。最後に子どもが「ありがとうございます」とお礼を述べているのに「どういたしまして」と答えられない「先生」もイルンダナァ。(2003.8.2)〉。この番組は、現在「夏休み子ども科学電話相談」というタイトルに改まって、今日も放送されていたが、「先生」方の言葉遣いも改まる気配は一向に感じられなかった。したがって、「先生」方及び番組担当者に何の期待もしていないが、以下の「相談内容」(先生方の回答内容)は、聞き逃すことができなかった。質問者は小学生(中学年・女児)。「ヒトやネコは、肺呼吸をしているので欠伸をします。トビハゼはエラ呼吸なのに欠伸をするのは何故ですか」。回答者の先生、女児に向かって「トビハゼが欠伸をするということを、どうして知りましたか」「テレビで観ました。アクビをしていると書いてありました」。言うまでもなく、トビハゼは欠伸をしない。「欠伸をしているように見える」だけである。その行動を「アクビをしている」と大人(テレビ制作者)が、「虚言を弄した」ことによって、女児の「疑問」が湧き上がった。それはそれで、子どもの「科学への関心」を高めたと言えなくもないが、その契機が大人の「虚言」(非科学的な制作態度)だとすれば、御粗末な結果という他はない。回答者の「先生」は、女児の「テレビで観ました、アクビをしていると書いてありました」という応答に「ああ、そう」と言っただけで、そのテレビ番組に対するコメントを一切しなかった。そのことが問題なのである。もしかして、その番組の骨子は、幼児向けの「擬人化」趣向であったかもしれない。だとすれば、「それはお話の世界」でのことです、とか、アクビをしているように見えるのを「アクビをしている」と、つい言ってしまったのです、ごめんなさい。と謝るのが「先生」(見識者)としての「礼儀」ではないだろうか。回答によって、女児の「トビハゼはエラ呼吸なのに欠伸をするのは何故ですか」という疑問は解けたかも知れない。しかし、ではいったい、あのテレビではどうして「トビハゼが欠伸をしている」などと言ったのだろうか、という疑問は解けぬままであろう。もしかして、件のテレビ番組を制作したのはNHK?、だとすれば、「先生」方がノーコメントを貫くのも肯ける。(2013.8.29)