梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

アフガン任務を終了した英国王子の「一言」

インターネットのYAHOOニュースに「ヘンリー王子がアフガン任務終了、「タリバン戦闘員を殺した」AFP=時事 1月22日(火)9時58分配信」というタイトルの記事が載っている。その内容は、以下の通りであった。〈【AFP=時事】攻撃ヘリコプターの乗員としてアフガニスタンに派遣されていた英国のヘンリー王子(Prince Harry、28)が任務を終え、21日にインタビューが公開された。ヘンリー王子は派遣中に同国の旧支配勢力タリバン(Taliban)の戦闘員を殺したと語った。ヘンリー王子は同国南部ヘルマンド(Helmand)州での20週間にわたった任務で、アパッチ(Apache)攻撃ヘリに搭乗して多数の任務をこなした。インタビューで王子は、イスラム過激派は「打ち負かされた」と述べたほか、テントや輸送コンテナの中で寝起きした体験など、広大なバスティオン基地(Camp Bastion)での日々について語った。英国内通信社プレス・アソシエーション(Press Association)の記者が投げ掛けた、ヘリから人を殺したことがあるかとの質問に対しては「ああ、他のたくさんの人も(同じことをした)」と答えた。「命を守るために命を奪う。そういう考えを軸に僕たちは活動していると思う」。「必要な時には撃つ…けど、本質的に英軍は抑止力以外の何物でもない」アフガニスタンでの従軍中、ヘンリー王子は3度にわたり記者らのインタビューに応じていたが、王子が戦場から離れるまで公開しないという取り決めが交わされていた。王子はタリバンとの接近戦を行った部隊の支援や、英米のヘリ部隊と共に負傷兵の輸送任務を行った。アパッチ攻撃ヘリの副操縦士だった王子は武器システムを担当し、ヘルファイア(Hellfire)空対地ミサイルやロケット弾、30ミリ機関砲を発射した。「楽しいよ。僕はプレイステーション(PlayStation)やXboxで遊ぶのが大好きな人間だから。僕のこの親指がすごく役に立っていると思いたいね」(以下略)〉。さて、この記事の中で私が看過できないのは、いうまでもなく、末尾の一節である。曰く「楽しいよ。僕はプレイステーション(PlayStation)やXboxで遊ぶのが大好きな人間だから。僕のこの親指がすごく役に立っていると思いたいね」。イギリスの王子は、アフガニスタンでの派遣任務で、旧支配勢力タリバン戦闘員を殺した。そのことが「楽しい」と言ったのだ。ヘルファイヤ空対地ミサイル、ロケット弾、30ミリ機関砲を発射した「この親指がすごく役に立っていると思いたい」?。彼は、文字通り「ゲーム感覚」で、任務を遂行したのである。そこには、「人を殺す」などという実感はさらさら感じられない。実を言えば、その「遊び半分」で戦争を行うことこそ、欧米列強の軍事関係者が「最も望む」ところであった。戦争が「殺人」である以上、勝者も敗者も、致命的なダメージ(PTSD:心的外傷後ストレス障害)を被ることから免れない。いかにして、そのダメージを軽減するかが、課題となっていたが、件の王子は、「人を殺す」ことの「(心の)傷み」など、つゆほどにも感じていない。さればこそ、(欧米軍事関係者の思う壺)、まさに「王子」の資質十分といったところだが、「人間」としては失格、彼の「凱旋」を歓迎する英国民もまた「愚かの極致」と唾棄するほかはない。
(2013.1.23)