梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

安倍首相《だんまり》の理由(上久保靖彦氏の「論述」)

 「東京新聞」朝刊1面のトップ記事は「都知事『帰省・旅行控えて』お盆・夏休み 首相は自粛求めず」という見出しであった。そこでは、《お盆期間中の帰省を巡る発言》として、小池都知事は「この夏はコロナに打ち克つことが最優先となる夏。特別な夏として旅行・帰省を控えて」(6日の記者会見)といい、安倍首相は「帰省に際し、3密を避ける、大声で話さないといった基本的な感染防止策の徹底を」(6日の記者会見)といい、さらに尾身分科会会長は「感染の対応が難しいという場合には、帰省はできれば控えていただきたい」(5日の記者会見)と述べたことが紹介されている。三者三様で「何が正解なの」と都民は困惑しているそうだが、図らずも「責任ある立場」にある三者の見解が不統一(バラバラ)であることが露呈したわけである。
 相変わらず、都知事の発言は「強圧的」、首相は「当たり前」、分科会長は「どっちつかず」という有様で、特に首相の発言は《だんまり》を決め込む方便に過ぎないと感じる。というのも、安倍首相はすでに《ある見解》を耳にして、《そうかもしれない》と思い始めているのではないか、という気がするからである。
 その見解とは、京都大学大学院医学研究科特定教授・上久保靖彦氏の以下のような論述である。(私はそれをユーチューブ「松田政策研究所チャンネル」で知った)
《新型コロナウィルスは2019年11月に中国の武漢で発生、蔓延した。そのウィルスはS型で病毒性は弱かった。(普通の風邪程度》その後、S型はK型に変異しさらに蔓延した。これらのウィルスは集団の60%が感染すると「集団免疫」が達成する。さらにK型がG型に変異し病毒性が強くなった。中国では肺炎による死者が激増した。しかしS型、K型の「集団免疫」が達成された以後、感染は終息に向かった。日本へは中国からの渡来者によってまずS型、次にK型のウィルスがもたらされた。2019年12月から2020年3月にかけて184万人が渡来している。そのことによってS型、K型が日本の国民に蔓延し、その症状が普通の風邪程度だったので、《誰も気がつかないうちに》「集団免疫」が達成されていた。特にK型のウィルスはG型の感染を抑制する力が強いので、日本人の死者は少ないと考えられる。以上の結論は、インフルエンザの流行曲線からコロナの上陸状況を解析することによって証明できる。今年のインフルエンザ感染者は例年に比べて極端に少ない。それはコロナの免疫がインフルエンザを抑制したからだと考えられる。欧米で死者が多いのは、K型が渡来する前にG型が蔓延してしまったためと思われる。》 この見解は、京都大学ips細胞研究所長・山中伸弥氏のいう「ファクターX」を解明したものと思われるが、山中氏のサイトでは紹介されていない。上久保氏自身が「私は専門家とみなされていないので・・・」と述べていたが、「この見解は《仮説》ではなく、実際のデータに基づくものだ。反論はいつでも受ける。それがデータに基づく正論であれば、誤りを訂正することはやぶさかではない」旨を強調していたことに、さわやかな印象を受けた。
 さて、以上の見解を安倍首相は上久保氏から《直接》聞いているはずである。しかし、上久保氏は「専門家」ではない(とされている)。だから、その見解を《そうかもしれない》と感じても、公にしたり肯定したりすることは、決してない。まして、これまでの施策が《ほとんど的外れ》、むしろ無策・失策が「感染防止」に役立っていたことを認めることになるのだから・・・。
 その心中穏やかならぬ懊悩が、空虚な言辞、《だんまり》を決め込む理由ではないか、と私は思う。