梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

コウちゃんの「知的障害は重い」か?

 東京新聞5月27日付け朝刊(19面)に「コウちゃんのクラス」という記事が載っている。「コウちゃんのクラスは、肢体不自由の特別支援学級の七組。在籍児童はコウちゃん一人で。2010年の入学に合わせて新設された。以来深谷教諭が中心となり、コウちゃんの力を伸ばす指導に取り組んできた」とあり、6年間の交流学習、合同学習を通してコウちゃんが、着実に成長した様子が詳しく紹介されていた。中でも、コウちゃんとの交流により他の児童も「共に成長する効果を実感したという深谷教諭の言葉は、今後の特別支援教育のあり方を示唆していると思う。ただ一点、コウちゃんについて「脳性まひで、全身が不自由。生活全般に介助が必要で、知的障害も重く、コミュニケーションも難しい」という記述には肯けなかった。コウちゃんは、アニメ映画の挿入歌が流れだすと笑顔になる。ゆっくり話しかけると、視線が合い、笑うことができる。「アー、アー、アー」と声の高さを変えながら、あいさつができる。そうした事実は、コウちゃんの「理解力」が正常であることの証しではないだろうか。コウちゃんの学習能力は脳性まひという症状によって著しく制限されているかもしれない。しかし「表現手段」が乏しいというだけで「知的障害も重く、コミュニケーンも難しい」と断定してよいか。素晴らしい教育実践なだけに、その一点が気になった。(2015.5.27)