梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

安倍首相の《驕り》

 安倍首相は、国有地が格安(8億円値引き)で「森友学園」に売却された件について、「私や妻、事務所を含めて一切関わっていない。関係していたなら、首相も国会議員も辞める」と述べた(東京新聞2月18日付け朝刊(3面)のベタ記事)そうだが、自分で話していることの意味を全く理解できないようである。第一に、妻が「名誉校長」である以上、関わりがあるのである。第二に、国有地が売却されたのだから、実務手続きに関わる、関わらない、に関わらず、「内閣総理大臣」という立場には、関わり(責任)が生じるのである。第三に、国民の財産である8億円の使途について明らかにし、説明する責任(関わり)があるのである。第四に、安倍首相と「森友学園」は、これまで相互に交渉をしてきた、という関わりがあるのである。
 「一切関わっていない」ということは、相互は無関係であり「全く知らない」ということである。安倍首相の魂胆は、国有地の売買については「一切関わっていない」ということらしいが、白々しい弁解である。もし「一切関わっていない」ならば、そもそもこのような問題が取り沙汰されるはずがない。その後、妻は「名誉校長」を辞任したと聞く。なぜ辞任する必要があるのか。「一切関わっていない」証しだとでもいうのだろうか。むしろ、反証にしかならないことを安倍首相は証明しているのである。それは「驕り」であり「油断」である。子どものケンカではあるまいし「ボク、知らないよ」で通せる話ではない。安倍首相は妻に倣って(自ら明言したように)「首相も国会議員も辞める」べきである。私腹を肥やしたわけではない、法律を犯したわけではない、などと強弁したところで、政治家(公人)として最も大切な「公明正大」という倫理に違反していることは明らかなのだから。 
 国民は、財産の8億円が「有力者」(富裕層の子弟)のために浪費されたことを知っている。安倍首相が「富の集中」を加速させ、収入格差を拡大していることを知っている。このまま首相の座に居続けるとすれば、《驕る平家も久しからず》という歴史の教訓が繰り返されるだけであろう。(2017.2.26)