梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

「家族一同」のコメント

 行方不明になっていた松戸市の小学1年女児の死亡が確認された後、女児の「家族一同」は、報道各社にコメントを発表した。その内容は、女児の捜索に尽力した人々に対する「感謝」だが、《どうか、これから私共家族がさやを無事に見送り、時に振り返りながら日々を少しずつ前に進めてゆけるように、皆様にはそっと見守っていただきたいです。》という「一文(願い)」が、すべてであろう。
 一縷の望みが断たれても、《行方不明になった日から2週間が経とうとしたとき、あなたが海に近い河口付近まで戻ってきてくれたと聞いた時は、家族の誰もが奇跡だと思いました。一度海に出たら、もう二度と会えることはないかもしれない、と覚悟を決めていたからです。》という「奇跡」は、あまりにも悲しすぎないか。  
女児の名前は明示されているのに、「家族一同」に関する情報(住所、両親の氏名・年齢など)が公開されないのはなぜか。およそ1か月前の8月下旬にも、富山県で2歳男児が自宅から行方不明になり、後日、海中から遺体で発見された「事故」があったが、その時も「家族」に関する詳細な情報は公開されなかった。報道機関による「個人情報」保護のためだろうが、まず「両親が怪しい」などと疑われたりもする。
 今回も、案の定、(ネット社会では)まず両親が疑われたが、その現実も悲しすぎないか。いったい、日本の社会はいつから、このような風潮になってしまったのだろうか。人々は、つねに疑心暗鬼で、誰も信用できない。結果、悲劇は倍加するのである。
(2022.10.8)