梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

専門家の役割と責務

 「新型コロナウィルス感染症」が流行し始めてから、ほぼ3年以上が経過した。厚生労働省のホームページによれば、2022年9月末の時点で、これまでの感染者約2100万人、そのうち死者は約45000人、入院したが回復して退院した者約2040万人という数字が示されている。つまり、この疾患は「感染しても回復する」割合が高く(97%)、致死率は1%にも満たない(0.2%)ということである。
 これまでの経過を振り返れば、2040万人が「軽快」しているのだから、その事例には事欠かないであろう。①どういう経路で感染したか、②発症までどのような経過を辿ったか、③発症後、どのような経過を辿ったか、④入院中はどのような治療をおこなったか、⑤その治療によってどのような効果がみられたか、⑤発症から回復までどれくらいの時間がかかったか、⑥療養中に留意すべきことは何か、⑦後遺症はあるか、⑧後遺症はどのような症状か、といった観点から、各事例の経過を「まとめる」(統計処理)することが重要である。その作業こそが専門家、関係機関の役割なのだ。
 これまでも、断片的な情報は明らかにされてきたが、それは「重症化の事例」に偏りがちであり、圧倒的な多数である「軽快化」については、ほとんど触れられていないような気がする。
 今、感染している人が、過度な不安に陥らないようにするためにも、客観的な事実に基づく「安心材料」を提供すること、それが専門家の責務なのである。
(2022.10.11)