梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

「広汎性発達障害児への応用行動分析(フリーオペラント法)」(佐久間徹・二瓶社・2013年)通読(1)

「広汎性発達障害児への応用行動分析(フリーオペラント法)」(佐久間徹・二瓶社・2013年)という本を通読する。著者のいう「フリーオペラント法」とはどういうものか。「フリー」とは「自由」という意味だが、私流に解釈すれば「拘束されない」ということであり、要するに「従来のオペラント法(応用行動分析=ABA)に拘束されない」、いわば「脱・オペラント法」もしくは「反・オペラント法」に他ならない。著者は、「行動療法」出身であり、みずからを「行動療法家」と称しているようだが、提唱している内容は、従来の「行動療法」(応用行動分析=ABA)とは「正反対」であることが、たいそう興味深かった。ちなみに、私自身は著者の提唱に「全面的に同意する」。そしてまた、私は自分を「行動療法家」だと思ったことは一度もない。以下、通読した内容を、私なりに要約しながら、感想を述べてみたい。


《まえがき》
・スキナーは、「なぜ?」「どうして?」という追求とは別に、当面の問題への対処として、事前の出来事、行動、事後の出来事の間の関連性を明らかにし、行動コントロール、行動予測が可能な法則性を提案した。
・(応用行動分析とは)「なんやしらんがこうすれば問題が解決するようだ。あるいは、問題がましになってくれる」という知恵なのである。


〈感想〉
・臨床(治療教育)で最も大切なことは、「事前の出来事」(原因)、「行動」(問題行動)、「事後の出来事」(結果・実態)を明らかにし、その法則性を究明することだと思う。そのためには、「なぜ?」「どうして?」という追求(考察)が前提となるが、応用行動分析では、そのことを「棚上げ」にしている。そのために「治療仮説」(診断)を立てずに、治療(セッション・試行)を開始する。大昔(1980年代)、行動療法家・小林重雄氏は、「日本言語障害児研究会」研究大会のシンポジウムで「私は俗物だから、人間の行動は見えるが、心の中はわからない。なぜ、どうして・・・、などという《原因究明》(仮説)はしないことにしている」といったような発言をしたことを、今でも鮮明に思い出す。
以来30余年が経過した今日、その考えが「自閉症治療」の主流となっているようだが、それは同時に「自閉症(の原因は)はわからない」が「なんやしらんがこうすれば問題が解決するようだ。あるいは、問題がましになってくれる」という知恵だけが「頼り」という証しであり、親にとっては甚だ「心もとない」、先行き不安な現状ではないだろうか、と私は思った。(2014.5.11)