梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

「旧約聖書」通読・《創世記》・第21章

■第21章
・主は、さきに言われたようにサラを顧み、告げられたようにサラに行われた。サラはみごもり、男の子を産んだ。アブラハムはその子をイサクと名づけた。アブラハムは神が命じられたように、8日目にイサクに割礼を施した。その時、アブラハムは100歳であった。サラは言った。「神はわたしを笑わせてくださった。聞く者は皆わたしのことを笑うでしょう」。また言った。「サラが子に乳を飲ませるだろうと、だれがアブラハムに言い得たであろう。それなのに、わたしは彼が年とってから子を産んだ」。
・さて、おさなごは育って乳離れした。イサクが乳離れした日にアブラハムはさかんなふるまいを設けた。サラはエジプトの女ハガルの産んだ子がイサクと遊ぶのを見て、アブラハムに言った。「このはしためとその子を追い出してください。このはしための子は世継ぎとなるべき者ではありません」。この事で、アブラハムはその子のために非常に心配した。神はアブラハムに言われた。「あのわらべのため、あなたのはしためのために心配することはない。サラがあなたに言うことはすべて聞きいれなさい。イサクに生まれる者が、あなたの子孫と唱えられるからです。しかし、はしための子もあなたの子ですから、これをも一つの国民とします」。そこでアブラハムは明くる朝はやく起きて、パンと水の皮袋を取り、ハガルに与えて、肩に負わせ、その子を連れ去らせた。ハガルは去ってベエルシバの荒野にさまよった。
・やがて皮袋の水が尽きたので、彼女はその子を木の下におき「わたしはこの子の死ぬのを見るに忍びない」と言って、矢の届くほど離れていき、子供の方に向いてすわった。そのとき、子供は声をあげて泣いた。神はわらべの声を聞かれ、神の使は天からハガルを呼んで言った。「ハガルよ。どうしたのか。恐れてはいけない。神はわらべの声を聞かれた。立って行き、わらべを取り上げてあなたの手に抱きなさい。わたしは彼を大いなる国民とするであろう」。神がハガルの目を開かれたので、彼女は水の井戸のあるのを見た。彼女は皮袋に水を満たし、わらべに飲ませた。神はわらべと共にいまし、わらべは成長した。彼は荒野に住んで弓を射る者となった。彼はバランの荒野に住んだ。母は彼のためにエジプトの国から妻を迎えた。
・そのころ、アビメレクとその軍勢の長ビコルはアブラハムに言った。「あなたが何事をなさっても、神はあなたと共におられる。それゆえ、今ここでわたしをも、わたしの子をも、孫をも欺かないと、神をさしてわたしに誓ってください。わたしがあなたに親切にしたように、あなたもわたしとあなたの寄留地のためにしなければなりません」。アブラハムは言った。「わたしは誓います」。
・アブラハムはアビメレクの家来たちが、水の井戸を奪い取ったことについてアビメレクを責めた。しかしアビメレクは言った。「だれがしたか、わたしは知りません。あなたもわたしに告げたことはなく、わたしもきょうまで聞きませんでした」。そこでアブラハムは羊と牛とをアビメレクに与え、ふたりは契約を結んだ。アブラハムが雌の小羊7頭を分けて置いたところ、アビメレクはアブラハムに言った。「なんのためですか」。アブラハムは言った。「あなたはこれらの雌の小羊7頭を受け取って、わたしがこの井戸を掘ったことの証拠としてください」。これによってその所をベエルシバと名づけた。彼らがふたりでそこで誓いをしたからである。彼らはベエルシバで契約を結び、アビメレクとその軍勢の長ピコルはペリシテの地に帰った。アブラハムはベエルシバに1本のぎょりゅうの木を植え、その所で永遠の神、主の名を呼んだ。こうしてアブラハムは長い間ペリシテびとの地にとどまった。
(2021.9.22)

「旧約聖書」通読・《創世記》・第20章

■第20章
・アブラハムはネゲブの地に移って、カデンとシュルの間に住んだ。彼がゲラルにとどまっていた時、アブラハムは妻サラのことを「これはわたしの妹です」と言ったので、ゲラルの王アビメレクは、サラを召し入れた。ところが神は夜の夢にアビメレクに臨んで言われた。「あなたは召し入れた女のゆえに死ななければならない。彼女は夫のある身である」。アビメレクはまだ彼女に近づいていなかったので言った。「主よ、あなたは正しい民でも殺されるのですか。彼はわたしに、これはわたしの妹ですと言ったではありませんか。彼女も彼は自分の兄だと言いました。わたしは心も清く、手もいさぎよくこのことをしました」。神はまた夢で彼に言われた。「いま彼の妻を返しなさい。彼は預言者ですから、あなたのために祈って、命を保たせるでしょう。もし返さないなら、あなたも身内の者もみな必ず死ぬと知らなければなりません」。
・そこでアビメレクは朝早く起き、しもべたちをことごとく召し集めて、これらのことを語り聞かせたので、人々は非常に恐れた。そしてアビメレクはアブラハムを召して言った。
「あなたはわれわれに何をするのですか。あなたに対してわたしがどんな罪をおかしたためにわたしと私の国とに大きな罪を負わせるのですか。あなたはしてはならぬことをわたしにしたのです」。アブラハムは言った。「この所には神を恐れるということがまったくないのいで、私の妻のゆえに人々がわたしを殺すと思ったからです。また彼女はほんとうにわたしの妹なのです。わたしの父の娘ですが、母の娘ではありません。そして、私の妻になったのです。神がわたしに父の家を離れて、行き巡らせた時、わたしは彼女に、行くさきざきで私を兄であると言ってください、これはあなたが私に施す恵みであると言いました」。そこでアビメレクは羊、牛および男女の奴隷を取ってアブラハムに与え、その妻サラを彼に帰した。そして言った。「私の地はあなたの前にあります。あなたの好きな所に住みなさい」。またサラに言った。「わたしはあなたの兄に銀千シケルを与えました。これはあなたの身に起こったすべてのことについて、あなたに償いをするものです。こうしてすべての人にあなたは正しいと認められます」。そこでアブラハムは神に祈った。神はアビメレクとその妻および、はしためたちをいやされたので、彼らは子を産むようになった。これは、主がさきにアブラハムの妻サラのゆえに、アビメレクの家のすべての者の胎を、かたく閉ざされたからである。
(2021.9.21)

「旧約聖書」通読・《創世記》・第19章

■第19章
・ふたりのみ使いは夕暮れにソドムに着いた。そのときロトはソドムの門にすわっていた。ロトは彼らを見て、立って迎え、地に伏して言った。「どうぞ家に立ち寄って足を洗い、お泊まりください。そして朝早く起きてお立ちください」。彼らは言った。「いや、われわれは広場で夜を過ごします」。しかし、ロトがしいて勧めたので、彼らはついに彼の所に寄り、家にはいった。ロトは彼らのためにふるまい、パンを焼いて食べさせた。ところが彼らの寝ないうちに、ソドムの町の人々は、その家を囲み、ロトに叫んで言った。「今夜おまえの所にきた人々はどこにいるか。それをここに出しなさい。われわれは彼らを知るであろう」。ロトは言った。「兄弟たちよ、どうか悪い事はしないでくだい。わたしには娘がふたりあります。これをあなたがたにさしだしますから、好きなようにしてください。ただこの人たちには何もしないでください」。彼らは言った。「退け」。また言った。「この男は渡ってきたよそ者であるのに、いつも、さばきびとになろうとする。それで、われわれは彼らに加えるよりも、おまえに多くの害を加えよう」。彼らはロトの身に激しく迫り、進み寄って戸を破ろうとした。その時、かのふたりは手を伸べてロトを家の中に引き入れ、戸を閉じた。そして家の入り口におる人々を、老若の別なく打って目をくらましたので、彼らは入り口を探すのに疲れた。
・ふたりはロトに言った。「ほかにあなたの身内の者がここにおりますか。あなたのむこ、むすこ、娘およびこの町におるあなたの身内の者を、皆ここから連れ出しなさい。われわれがこの所を滅ぼそうとしているから、です。主はこの所を滅ぼすために、われわれをつかわされたのです」。そこでロトは出て行って、その娘たちをめとるむこたちに告げて言った。「立ってこの所から出なさい。主がこの町を滅ぼされます」。しかしそれはむこたちには戯れごとに思えた。
・夜が明けて、み使いたちはロトを促して言った。「立って、あなたの妻とふたりの娘とを連れ出しなさい。そうしなければ、あなたもこの町の不義のために滅ぼされるでしょう」。彼はためらっていたが、主は彼らにあわれみを施されたので、かのふたりは彼の手と、妻の手と、ふたりの娘の手を取って連れ出し、町の外に置いた。その時、そのひとりは言った。「のがれて自分の命を救いなさい。うしろをふりかえって見てはならない。低地にはどこにも立ち止まってはならない。山にのがれなさい。そうしなければあなたは滅びます」。ロトは彼らに言った。「わが主よ。どうかそうさせないでください。しもべはすでに恵みを得ましそのちにた。あなたはわたしの命を救って大いなるいつくしみを施されました。しかし、わたしは山までのがれる事ができません。災いが身に追い迫ってわたしは死ぬでしょう。あの町をごらんなさい。逃げていくのに近く、小さい町です。どうかわたしをそこにのがれさせてください。それは小さいではありませんか。そうすればわたしの命は助かるでしょう」。み使いは彼に言った。「わたしはあなたの願いをいれて、その町は滅ぼしません。急いでそこへのがれなさい。あなたがそこに着くまではわたしは何事もすることができません」。これによって、その町はゾアルと呼ばれた。ロトがゾアルに着いた時、日は地の上にのぼった。
・主は硫黄と火とをソドムとゴモラの上に降らせて、これらの町と、すべての低地と、すべての住民と、その地にはえている物を、ことごとく滅ぼされた。しかし、ロトの妻はうしろを顧みたので塩の柱になった。アブラハムは朝早く起き、ソドムとゴモラの方をながめると、その地の煙が、かまどの煙のように立ちのぼっていた。
・こうして神が低地の町々、ロトの住んでいた町々を滅ぼされた時、神はアブラハムを覚えて、その滅びの中からロトを救い出された。
・ロトはゾアルを出て上り、ふたりの娘と共に山に住んだ。ゾアルに住むのを恐れたからである。彼はふたりの娘と共に、ほら穴の中に住んだ。姉が妹に言った。「わたしの父は老い、わたしたちの所に来る男はいません。父に酒を飲ませ、共に寝て、父によって子を残しましょう」。彼女たちはその夜、父に酒を飲ませ、姉がはいって父と共に寝た。ロトは娘が寝たのも起きたのも知らなかった。あくる日、姉は妹に言った。「わたしは昨夜、父と寝ました。今夜もまた父に酒を飲ませましょう。あなたがはいって共に寝なさい。父によって子を残しましょう」。彼らはその夜もまた父に酒を飲ませ、妹が行って父と共に寝た。ロトは娘が寝たのも起きたのも知らなかった。こうしてロトのふたりの娘たちは父によってはらんだ。姉娘は子を産み、その名をモアブと名づけた。これは今のモアブびとの先祖である。妹もまた子を産んで、その名をベニアンミと名づけた。これは今のアンモンびとの先祖である。
(2021.9.20)