梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

2017年6月のブログ記事

  • 野坂昭如氏、最後の《一文》

    「焼け跡闇市派」を自称する作家・野坂昭如氏が逝った。(雑誌連載)最後の原稿の末尾の一文は「この国に、戦前がひたひたと迫っていることは確かだろう」だったという。(東京新聞12月11日朝刊・1面)私たちは、この「戦前」という言葉の意味を噛みしめなければならない。それは、国民が同じ価値観、同じ考え方で、... 続きをみる

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  • 「枕草子」・《翁丸の物語》

    「枕草子」といえば「春はあけぼの」(第一段)が頭に浮かぶが、私にとっては「上にさぶらふ御猫は」(第九段)の方がおもしろい。その要旨は以下の通りである。〈天皇に飼われている猫は五位という位をいただいて、たいそうかわいらしかった。名前を「命婦のおとど」という。あるとき、その猫が縁側に寝ていたので、世話... 続きをみる

  • 『宅間守精神鑑定書』(岡江晃・亜紀書房・2013年)の《疑問》

     「宅間守精神鑑定書」(岡江晃・亜紀書房・2013年)を読み終えた。本の帯には、「宅間守は2001年6月、大阪教育大学附属池田小学校で児童・教諭を殺傷した。2003年8月、死刑判決を受け、2004年9月、死刑が執行された。本書は、宅間守と17回面接し、精神鑑定を行った精神科医による初の著書である。... 続きをみる

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  • 教訓Ⅶ・《革命をめざす人々へ》

     夢と現実を見間違えてはならない。どこまで行っても、夢は夢、現実は現実である。革命とは、現実を変えることではない。現実を変えるのは経済であり、政治である。革命とは、夢を語ることである。だから、革命はむなしい。革命は泡のように消失する。革命は永久に続くが、永久に実現しない。そのことを踏まえて、革命を... 続きをみる

  • 《感情》の育て方

      「感情」の源は「快・不快」という生理的感覚である。胎児は母胎に護られて「快」の感覚を味わっている。(母胎が十分に護れない場合は「不快」を感じるかもしれないが・・・。)その快感は、出生時に妨げられる。産道内での圧迫に堪え、大気中に生まれ出る時には、肺呼吸を始めなければならない。気圧、気温、湿度な... 続きをみる

  • 駅前広場にて

     首都圏・常磐線の駅前広場に私が降り立つと、ひとり言を呟きながら、若い男がすり抜けていった。よく見ると乳児を抱えている。そうか、子どもに話しかけていたのかと思い、後姿を見送ると、ベンチに腰を下ろしていた老人男性が突然、大声を出した。「オイ!何だこの野郎、もういっぺん言って見ろ。馬鹿野郎」。乳児を抱... 続きをみる

  • 惜別の唄・「サヨナラだけが人生だ」

    ずいぶん時が経ったけど ちっとも昔と変わらない 寂しがり屋の甘えん坊 強がりばかりの意気地なし そんなあなたに付き添って 四十五年が過ぎました 青春の夢いまいずこ むなしさばかりが募ります ずいぶん時が経ったけど ちっとも昔と変わらない 世間の風の冷たさも ひとりよがりの人情も 私も古稀を過ぎまし... 続きをみる

  • 子どもを「自閉症」にするかもしれない《30の方法》

     「自閉症スペクトラム」の原因が「脳の機能的障害」であるか否かという問題にかかわりなく、生育上の環境、とりわけ育児法のあり方が、「自閉症状」(行動特徴)に多大な影響を及ぼしていることは明らかである。  20世紀初頭、アメリカの行動主義心理学の創始者・ジョン・ワトソンは、以下のような育児法を提唱した... 続きをみる

  • 石ころ

     石ころ この石ころは 今、どうして ここにいるのだろう。 君を投げたのは誰か。 君を礫に仕上げたのは誰か。 これまで 君は何人の悲しみを見てきたか。 君は語らない。 なぜなら これまで 誰も君に語りかけなかったから。 今、こうして 君と共に在ることは幸せだ。 君と交流できることは幸せだ。 でも ... 続きをみる