梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

「幼児の言語発達」(村田孝次著・培風館・1968年)抄読・48

4 言語理解の発達
【要約】
 発声行動の言語化が子どもの聞く談話の言語的理解を基礎として生じてくることは明白であり、使用に対する理解の時期的先行が1歳6ヶ月から3歳0ヶ月ごろまでではほぼ2~3ヶ月の間隔で、もっとも顕著に現れるといわれている。
 最初に、非言語的な側面における識別という、もっとも初期の理解を概観し、漸次、言語的により複雑な音声の理解に進む。
【感想】
 ここで重要なことは、子どもはまず大人の談話を「聞いて理解し」、ほぼ2~3ヶ月後に、その談話を発声行動化できるようになるというプロセスである。したがって、1~2歳児に、談話を聞かせ即座に発声させよう(模倣させよう)としても、無理な話である。子どもは、まず談話を聞きその意味をわかるようになる方が先だ、ということがよくわかった。一般に「語学学習」では、談話を意味とともに聞かせ、すぐに「発音練習」(リピート)をする傾向が目立つが、その方法こそが言語習得を困難にしているのではないか、と私は思う。もともと言語は「学習」によって身につくものではない。私たちは、義務教育で英語を学習したが、身についていないという事実が、そのことを証明している。
 言語の習得は、「(育児者との)声のやりとり」(かけあい)が原点であり、その「繰り返し」(習慣)によって可能になるのではないか、と私は考えている。言語は「学習」ではなく「習慣」(育児者との相互作用)によって身につくという考え(原典は「国語学言論」・時枝誠記)が正しいかどうかを検証するために、以下を読み進めることにする。
(2018.6.23)