梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

「本当はこわくない新型コロナウィルス」(井上正康・方丈社・2020年)通読・21《Q PCR検査は受けたほうが良いのでしょうか?》

《Q&A》
Q PCR検査は受けたほうが良いのでしょうか?
A・風邪のような症状があり、感染が疑われる場合は受けたほうがいい。
・ただし、陽性と判明しても特効薬はないので基本的治療法は(風邪と)同じだ。
・PCR検査を過大評価する思い込みがコロナ禍を拡大する元凶になっている。


Q 感染した時はどうすれば良いですか?
A・無症状であれば問題ない。軽度の発熱などの症状がある場合は自宅で安静にし、高熱、味覚や嗅覚などがあれば病院を受診する。


Q 抗体検査は受けたほうが良いでしょうか?
A・健康者にとってはする必要はない。高齢者、免疫的にハンデのある人、医療関係者が利用する価値はある。


Q インフルエンザも型が違うとワクチンが効かないと言いますが、変異する速度が速いコロナの抗体検査は意義があるのでしょうか?また、短期間で消失する抗体でも抗体検査を受ける意味はありますか?
A・コロナウィルスに感染するとポリクローナル抗体がつくられ、構造が類似したウィルスにもショットガンのように作用する。交差反応で作用するので、ある程度ウィルスが変異しても抗体検査をする意味はある。一度、抗体が陽性になれば免疫記憶が保存されるので安心して働ける。


Q 2メートルのソーシャルディスタンスは必要ですか?また、マスクはつねに着用すべきでしょうか?
A・つねに2メートル以上空けるべきなどという考えは過剰反応だ。大声を出さない劇場、映画館、レストラン、風通しのよい野外などでの「ソーシャルディスタンス」などは無意味である。
・モノを介して時間差攻撃的に感染する新型コロナに対しては、3密回避やソーシャルディスタンスなどの多くは無意味だ。
・マスクの隙間とウィルスの大きさを考えると、マスクを着けてもウィルスは鼻や口から入ってくる。手で鼻や口を触る機会は減少するので感染リスクはある程度低下する。
・マスクは他人に感染させないためには有効であり、病院や高齢者施設では重要である。


【感想】
・日常感じている「疑問」に対して、わかりやすく具体的に答えている。PCR検査は、風邪の症状がある場合には受けた方がいい、感染しても無症状なら問題ない、少しの発熱程度なら自宅で静養する、高熱や味覚・嗅覚に異常を感じたら受診する、抗体検査は高齢者の場合は受ける価値がある、2メートルのソーシャルディスタンスや3密回避は意味がない、マスクは感染させないためには必要である、ということがわかった。
(2021.1.14)

「本当はこわくない新型コロナウィルス」(井上正康・方丈社・2020年)通読・20《ワクチン幻想を疑え!》

■ワクチン幻想を疑え!
・現代のワクチン開発は、ウィルスや細菌などを弱毒化して用いる古典的方法ではない。ウィルスの特定部位を決めて、そこに結合する特異的抗体をつくらせる遺伝子工学的手法が主流だ。8月20日現在で約169種類以上のワクチンが世界で開発中であり、約30種が臨床試験に入っている。
・ワクチンは病原体に対する有効な武器だが、強い副作用や後遺症が大きな問題になることがある。特に変異の激しいウィルスでは抗体と結合することで病態が悪化して死亡する抗体依存性感染増強(ADE)が起こる可能性がある。
・大半の健康な日本人にとっては、新型コロナウィルスもインフルエンザ並みの風邪ウィルスに過ぎないので、ワクチンは安全性を十分検討した後で、必要な場合のみ接種すればよい。


■治療薬の開発のめどは?
・アビガンの効果は極めて限定的だ。
・治療薬やワクチンに対しては、過剰に期待せず、日常的な感染予防に努めることが大切である。


■コロナ時代の免疫パスポート
・新型コロナウィルスは東アジアの健康な人々には通常の風邪ウィルスと大差ない。
・今回の新型コロナウィルスでは、東アジアの民族的HLA特性、コロナ仲間に対する交差免疫、弱毒株の後に強毒株が上陸したことによる免疫強化作用(ブースター効果)などの幸運に恵まれ、日本では欧米や南半球のような甚大な被害は免れた。
・しかし、今も世界中で新たな変異株が誕生しており、国内でも新たな新型コロナが誕生する可能性もある。
・新型変異ウィルスの脅威は民族の免疫特性に大きく左右されるので、今後は国境を越える際、および高齢者施設や医療施設での施設内感染を防止する目的で、ワクチンや抗体検査などの“免疫パスポート”が必要になる場合があると思われる。
・コロナウィルスに対する日本人の免疫特性や抗体の特色を網羅的に解析することにより、やがて再来する「次の波」に対して、過剰反応せずに必要かつ有効な科学的対策を準備しておくことが、日本政府や医学研究者の緊急の課題である。


【感想】
・新型コロナウィルスの感染症については、ワクチンも治療薬も、あまり期待できないということがわかった。さればこそ、国民がそのことを理解・認識する前に、不安を煽り立て、誰もがワクチンに「飛びつく」ような雰囲気作りをしているのではあるまいか。誰が?・・・それがわかれば苦労はないが、ワクチンで「一儲け」を企んでいる輩、それに便乗して「それなりの利益」を得ようとしている連中であることは間違いないだろう。
(2021.1.14)

「本当はこわくない新型コロナウィルス」(井上正康・方丈社・2020年)通読・19《過大評価されて混迷を深めるPCR検査》

■過大評価されて混迷を深めるPCR検査
・PCR検査はRNAウィルスの感染力などとは無関係に、遺伝子の断片を大幅に増幅して超高感度で検出する方法だ。遺伝子の断片を検出できる画期的な検査だが、実施には操作に習熟したスタッフが必要であり、感度と特異度で大きな問題がある。感度が低ければ感染者を見逃すことになり、高まればわずかな断片の混入でも陽性と判定されてしまう。発症もしていないし、他人に感染させる恐れもない人まで“感染者”としてしまう可能性がある。PCRの陽性はRNA断片の存在を意味するが、感染や感染力の有無を意味するものではない。
・コロナウィルスのPCR検査では、ウィルス遺伝子の特徴的な一部を鋳型(プライマー)とし、これを大幅に増幅して検出している。このプライマーをどのように設定するかはPCR検査の本質的な部分だが、大半の検査ではこの情報は公表されていない。このような状況でPCR検査を無症状者まで適用拡大すると、多くの偽陽性(陰性なのに陽性と判定されること)や偽陰性(陽性なのに陰性とされること)などの問題で大きな混乱を招く。
・もし1億人以上の無症状の国民をPCR検査すれば、数千万人もの偽陽性や偽陰性が出ることになる。これでは検査した意味がなくなり、莫大なコストが無駄になる。
・最近では全自動PCR検査装置が日本で開発されたので、次の波では必要な場合に十分な数を検査できる体制は整備可能と思われるが、PCR検査幻想に翻弄されないことが大切だ。


■日本ではCT検査の活用が有効!
・日本ではCT検査(コンピュータ断層撮影法)を活用したほうが効果的で正確な診断が可能になる。日本の病院には肺の画像診断が可能なCT画像装置が多く整備されており、その総数は世界の30%近くにのぼる。この診断装置はウィルス性の間質性肺炎を診断するためには大変すぐれた装置である。
・新型コロナウィルスの場合、すりガラス状の所見が認められるが、それは肺の血管に血栓が生じることによる画像だ。
・発症して感染が疑われる人には、まずCT検査を実施し、間質性肺炎様の画像が認められた場合に、コロナウィルスによるものか否かをPCR検査で判定するほうが現実的である。
・無症状の人は基本的に検査をする必要はない。症状が出たときにCT検査を実施し、間質性肺炎の像が認められればPCR検査を実施する方法であれば、PCR検査数は劇的に少なくてすむ。日本ならではの診断スタイルを確立することができる。


【感想】
・PCR検査には様々な問題点が指摘されているが、相変わらずPCR検査を「診断検査」として使用している。厚生労働省のホームページでは、連日、PCR検査実施人数、陽性者数、入院・治療等を必要とする者の人数(有症者数)、そのうち重症者数、死亡者数、退院者数等が公表されている。1月12日現在、検査実施人数は累計600万人弱(5942315人)で、そのうち陽性者は累計30万人弱(292212人)、そのうち有症者は、現在6万人強(61597人)、そのうち重症者は現在881人という数値だ。つまり、検査を受けた者は国民の約5%、陽性者はそのうちの約5%、さらに有症者はそのうちの約20%、重症者はそのうちの約2%に《過ぎない》ということがわかる。
・つまりPCR検査によって《感染者》とされた者が30万人いるが、そのうちの80%は「無症者」なのである。しかし彼らは《感染者》として扱われる。その不都合さが「医療崩壊」などにつながるのではないか。
・有症者は6万人強、重症者は881人、死亡者は累計4094人(致死率1.4%)という数値に注目すべきだが、為政者も専門家もマスメディアも《感染者数》の増減ばかり
を取り沙汰している。この数値を、インフルエンザの有症者1千万人、死者1万人と比べれば、全く《問題外に少ない》ことがわかる。にもかかわらず、今「緊急事態宣言」が出されて、国民はまたまた不自由な生活を強いられている。それはいったいなぜなのか。
・著者は、高齢者等の「免疫弱者」に対するケアを最重要視しているが、当然だ。致死率1.4%だから、今後、有症者6万人強のうち850人程度が死亡するおそれがある。現在、重症者は881人だから、その人たちに対するケアを最優先しなければならない、と私も思う。
・著者はまた、①症状がない者は検査する必要はない。②症状が出たときはまずCT検査を。③その結果に基づいてPCR検査を。という診断スタイルを提唱しているが、医療現場は耳を傾けるべきだと思った。
(2021.1.14)