梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

厚生労働省ホームページの《不具合》

 厚生労働省のホームページに、新型コロナウィルス感染症の「発生状況」が表示されている。①PCR検査実施人数、②陽性者数、③入院治療等を要する者の数(④うち重症者数)、⑤退院又は療養解除となった者の数、⑥死亡者数。⑦確認中という欄があり、連日、その数値が示されている。
 ちなみに1月20日現在の数値は以下の通りである。
①6053480 ②339774 ③69504(④1014))⑤264987 ⑥4647 ⑦1280
この数値からわかることは、おおむね以下のようになるだろう。
1《これまで》にPCR検査受けた人数は約605万人で、そのうち陽性者は約34万人だった。(陽性率5.6%)
2《現在》入院治療等を要する者(発症者=患者)は約7万人で、そのうち重症者は約1000人である。 
3《これまでに》約26万5千人が退院した。(退院率=退院者数÷陽性者=77.9%)4《これまでに》4647人が死亡した。(死亡率=死亡者数÷陽性者=1.3%) 
 また、「確認中」という欄があるが、よくわからない。*印がついており、陽性者から入院治療等を要する者、退院又は療養解除となった者、死亡者を減じた数と説明されているが、その数値(の推移)にどのような意味があるのだろうか、私にはよくわからない。 いずれにせよ、「発生状況」の表からわかることは、《この程度》のことでしかない。この表示の根本的不具合は、すでにみたように《これまで》の数値(累計)と《現在》の数値(現在値)が、同じ表の中に《並記》されていることだと私は思う。知りたいことは、《今日1日》で何人が検査を受け、そのうち何人が陽性だったか、そのうち発症者は何人だったか、そのうち重症者は何人か、また死亡者は何人だったか、という情報であり、その数値が《1日ごとにどのように推移していくか》を明らかにすることが、「発生状況」を表すうえで重要なのだ。
 私はこれまで、「発症率」(発症者の陽性者に対する割合)を③÷④で計算してきたが、③は累計であり④は現在数だから、本来「計算不能」の虚妄な数値(割合)を見てきたことになる。
 陽性者のうち8割弱の患者が退院していく中で、「自宅療養中に容体が急変して死亡した」症例が数多く報道されている毎日だが、未だに「不安を煽る」メディアの姿勢は続いている。厚生労働省もまた、いつまでこの不具合の表示を続けるつもりだろうか。
(2021.1.21)

「ここまでわかった新型コロナ」(上久保靖彦、小川榮太郎・WAC・2020年)要約・1・《はじめに》

《はじめに》(小川榮太郎)
・2020年9月1日現在、日本での新型コロナウィルスによる死者は累計1249人で、死者全体(推計70万人)の0.1%強に過ぎない。死亡者の平均年齢は79.3歳、院内感染による死亡が4割を超えるとされている。
・一方、日本経済は(マスコミによる凄まじい煽りを受けて)壊滅的な減収が続いている。・世界規模での危機も深刻だ。前年からGDP35%減と考えられる。世界史上空前の現象だろう。
・ウィルスそのものの脅威よりも、はるかに巨大な、誤った煽動による社会経済生活の破壊が進行しただけだったのではないか。
・コロナウィルスそのものは、元来、平凡で微弱な症状を引き起こす風邪ウィルスだ。
当初、今回変異したコロナウィルスは、通常のコロナウィルスとは全く別物だと恐怖したのは無理もないが、時間が経つにつれ、ウィルスの正体が徐々に明らかになり始める。
・5月に山中伸弥京都大学教授が「ファクターXは何なのか」を世に問いかけた。それに対して様々な議論が寄せられたが、「説」を立てて、世界中の感染状況の差異を説明しようとしたのが、上久保靖彦京都大学大学院特定教授と高橋淳吉備国際大学教授の研究チームである。このモデル理論は、マスコミでは「集団免疫説」として大きく採りあげられ、世界からも注目されている。しかし充分理解されているとは言い難い。当初の恐怖を引きずり、常識や前提を忘れた議論が横行している。マスコミの扇情的な報道が続き、科学者が冷静で科学的な説明をしにくい空気を作り続けてしまった。歪なメディア空間が醸成され、日本社会は半年にわたりフリーズを続けてきた。
・本書では、ウィルスとは何か、免疫とは何かの確認から始まり、集団免疫論がどう構築されたか、「新型コロナウィルス」とは何なのかを詳しく解説していただき、今後、どのように対処し、ふるまうべきかを話していただいている。根拠を充分示して説明していただいたものと自負している。


【感想】
・本書が発行されたのは2020年10月なので、以来3か月が経っているが、未だに日本社会の「フリーズ」は続いているようである。
・「コロナはただの風邪」というだけで「村八分」にされるか、無視される空気はまだ続いている。大学の共通一次試験の受験生が、マスクから鼻を出していただけで「不正行為」として糾弾される世の中なのだから・・・。
・今後、どう対処し、どうふるまうべきか、興味を持って読み進めたい。
(2021.1.20)

「本当はこわくない新型コロナウィルス」(井上正康・方丈社・2020年)通読・27《おわりに》

《おわりに》(要約)
・「ステイ・クローズド」で日本を元気に!
・通常、ウィルスは変異を繰り返しながら弱毒化して人類との共存を模索する。しかし、遺伝子変異が著しい場合は凶悪なウィルスも誕生することがある。(2002年のSARS、2012年のMERS)“次の波”も今回と同様の幸運に恵まれる保証はない。政府や専門家は、世界と日本での発症状況を注意深く観察しながら、危険が増したら素早く対応できる科学的体制を構築することが大切だ。
・日本人には手洗いの習慣がしみついている。靴を脱いで家に上がる習慣も衛生的だ。節度のある距離でお辞儀をする習慣も無意識的感染症対策になっている。島国の日本人は感染症に対して歴史的にも適切な行動をとってきた。それが世界でも屈指の清潔な国の基盤になっている。
・「3密回避」や「ステイホーム」が叫ばれて文化活動や経済活動が大きく抑制され、日本はすっかり元気を失った。そこで、ポストコロナ時代にこそ「ステイ・クローズ」を提唱したい。“空気”に支配された過剰反応で失われた人間関係をもう一度散り戻し、心豊かな日本社会を再構築したいから。ステイ・クローズで社会を明るく元気に活性化しよう
これが本書に込めたメッセージだ。
・本書は人災的コロナ禍の被害を少しでも軽減する目的で日進月歩の最新コロナ情報をわかりやすく俯瞰的に解説したものである。日本人が健康で文化的な生活を取り戻すためのささやかな羅針盤となることを願っている。


【感想】
・著者は最後に「ステイ・クローズ」を提唱している。「近くにいて」という意味だ。人と人が「より添わなければ」社会は成り立たない。要するに、「もっと近づこう」と呼び掛けているのだ。「ソーシャル・ディスタンス」とは「距離を置く」(2メートル以上離れろという)ことだから、「3密回避」も含めて、政府、専門家、メディアの趣旨とは正反対のことを提唱していることになる。まことに勇気のある発言だが、現状をみれば、この提唱が人々に受け入れられることは難しいだろう。今や、「感染はうつす方もうつされる方も悪」「マスクは必需品」といった空気が、全国津々浦々にまで蔓延しているのだから・・・。いったいいつまで、日本人はマスクを着け続けるのだろうか。 
・著者によれば、現在の感染拡大は「桜の季節」頃には収まるだろうということだ。それまで「気長に」待つことにしよう。
(2021.1.19)