梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

「ここまでわかった新型コロナ」(上久保靖彦、小川榮太郎・WAC・2020年)要約・18・《■なぜ感染者が突然倒れたのか》

■なぜ感染者が突然倒れたのか
【小川】突然意識不明になって短時間で手遅れになるのは普通の肺炎より恐ろしい。こうした症状の激しさは通常の風邪では考え難く、それで新型コロナへの恐怖が一気に高まった。この症状の激しさについてどう考えるか。
【上久保】それはADEを起こした場合だろう。日本でもK型に感染していない場合があり、個別例では劇症化もあったと思う。しかし、事柄をマクロで考えてもらいたい。日本には65歳以上の人が3588万人いる。今回新型コロナでは約1000人亡くなっている。1万人あたりで計算すると、0.3人以下の死亡者だ。2019年の日本の死亡者数は、137万6000人、死亡原因別では、癌が37万4000人で1日あたり1000人、月に3万人、心疾患が約20万人で1日あたり約550人が亡くなっている。不慮の事故が約4万、自殺が2万人、インフルエンザが3000人、肺結核が2000人だ。こうした中に新型コロナウィルスを置いてみれば、大変マイナーな死因と言う他はない。病院で例年と異なった特殊な対応をとる必要はないのではないか。インフルエンザ、癌も治療法があるとは言い難い。この1か月ほどで新型コロナの1日の死者数はゼロから最大16人まで、50歳代未満の死亡は稀だ。寝たきりの人にコロナをうつしてはいけないから面会できないというのもおかしい。透析の患者も日本では約33~34万人いて、ここ数か月でコロナとされている死亡者数は、約100人だ。透析に来る人は、電車やバスに乗って、週3回通院する。だから市中感染している。免疫を持っているのだ。
【小川】なぜ感染が収束するか。一つは人間側が充分に免疫を持った結果。もう一つは、ウィルスが変異によって弱毒化して感染が収まる。どちらか。
【上久保】ウィルス自体は変わっていない。
【小川】最終的にホストが全滅しちゃうといけないからウィルスが弱毒化、無毒化していくという説明があるが。
【上久保】ウィルス自体はあまり変化しない。変化するのはROだ。ROが変わると集団免疫達成に必要な率が変わる。これには簡単な計算式がある。集団免疫域値(H)は、H=(1-1/RO)×100%とされている。例えばROが10になったら、集団免疫に必要な率というのは、1引く十分の一で90%に感染することが必要ということになる。欧米のG型のROは6.9だった。1引く七分の一は84%だ。武漢のG型はRO5.44で、この場合は集団免疫の達成に80%の人の感染が必要だ。
【小川】つまり、ウィルスの側の毒性が変わるのではない。
【上久保】伝播力が変わる。変異があるとROが上がっていき、最後は集団免疫に必要な
感染者数に差が出てこないから収束する。


【感想】
・上久保氏が「この1か月ほどで新型コロナの1日の死者数はゼロから最大16人まで、50歳代未満の死亡は稀だ」と述べているのは、2020年8月頃と思われるが、11月以降は死者数が増加し、1日あたり数十人、多いときは100人を超える日もある。ということは、いったん収束したものが「再発した」ということになるのだろうか。感染者、有症者、重症者も「依然としてゼロにはならない」日が続いているが、現在流行しているのは何型のウィルスなのだろうか。それがわかるのはいつ頃になるのだろうか。
・まもなくワクチンが接種されるようになるだろう。今回のワクチンは、従来とは異なり、どのような結果になるかは予測できないという意見もある。「無料」で接種できるということだが、なぜだろうか。インフルエンザのワクチンでも「有料」なのに・・・。
(2021.2.5)

「ここまでわかった新型コロナ」(上久保靖彦、小川榮太郎・WAC・2020年)要約・17・《第四章 新型コロナウィルスの正体》

《第四章 新型コロナウィルスの正体》
■新型コロナには免疫しか決め手はない
【小川】職場の女性が、2月半ばに38℃ぐらい発熱してすぐ治まるというこ
とがあった。この半年、身近でもちょっとした風邪の症状は随分多い。
【上久保】それはK型だろう。女性の症状は1日で終わってしまうことが多
い。男性で喫煙者は痰とか咳が1か月近く続く。
【小川】1日や半日で症状が消えたり、咳が続くという人はたくさんいた。P
CR検査をしたら陽性だったのか。
【上久保】街中を歩けば、ほぼ100%は感染する。
【小川】ウィルスと人類の共存という問題と絡んでくる。人とエボラは共存で
きないが、インフルエンザやコロナは、共存を続けてきた。例年より大きな被
害をもたらしたとはいえ、基本的に、隔離したり制圧できるものではない。
【上久保】免疫しか決め手はない。人間にはもともと自然免疫がある。新型コ
ロナでは更に獲得免疫が形成されている。抗体がその指標となるが、短期決戦
用の抗体がIgM、長期にわたって有効なのがIgGだ。病初期には、IgMという免
疫グロブリン抗体が上がるが、それでは充分に抑え込めない。あとから出てく
るIgGという免疫グロブリ抗体が長期にわたって有効で強い抗体だ。今回の新
型コロナウィルスでは、それを裏付ける研究が最近発表された。8月13日に
発表された村上康文東京理科大教授の抗体定量検査だ。村上教授は首都圏38
2人の検体をサンプルに使用して、IgM、IgGを数カ所の遺伝子情報から調べ、
サンプル例を公表した。2人、値の高い人がいるが病院に入院している人だろ
う。IgMが先に上がっている。初感染パターンだ。初めて感染した時はIgMが先
に上がる。それ以外の多くの人のサンプルの場合、量は少ないがきちんと出て
いる。全例においてIgMとIgGとが同時に上がっている。これは既感染パターン
だ。そういう人にウィルスが再度曝露している。初感染の時はIgMが上がり、
その後IgGが上がってくる。そして、ウィルス感染がそのIgGで抑え込まれて治
ると、IgGは下がっていく。治ると次の感染に備えるメモリー(記憶)B細胞が
生成されてIgG抗体は下がっていく。だから入院患者以外の人の検体ではIgGの
抗体も下がり、値が低い。検体の数を多くしても、IgGが上がるものばかりだ
ろうと想像される。だとすれば、日本人の殆どはもう免疫を持っているという
ことになる。無症候のウィルスとはそういうものだ。
【小川】一方、症状の劇症化などが当初たくさん伝えられ、若い人も亡くな
る。これが多くの国民を恐怖に陥れた。
【上久保】それは実態を病理学的に検証する必要がある。28歳の力士が亡く
なったが、あれはコロナではないかもしれない。力士はぶつかり稽古をして接
触の機会が多いからうつっていないはずはない。だからPCR検査をすれば陽性
反応は出る。しかし基礎疾患があったとの報道があったと思うが、コロナやイ
ンフルエンザなどに感染しているときに、不整脈や心筋梗塞などで心臓が止ま
って突然死することはある。
【小川】女優の岡江久美子さんはどうか。
【上久保】抗がん剤や放射線の治療をしていた場合、六十代でも免疫が落ち
て、肺炎を起こす場合がある。志村けんさんも肺気腫だった。肺炎を起こして
亡くなることは時々ある。


【感想】
・新型コロナウィルスに対しては「感染防止」よりも「免疫」が《決め手》で
あることが強調されている。日本の被害が欧米、南米に比べて少ないのも、
《知らないうちに》ほとんどの日本人が免疫を獲得していたからだ。それは村
上康文東京理科大教授の抗体定量検査によって《実証》されている。
・しかし、為政者、専門家、メディアは未だに「感染防止」の一点張りで、
《感染者(PCR陽性者)の増減》に一喜一憂している。それは、新型コロナウ
ィルス感染症をペスト並の「2級指定感染症」に位置づけているため、《隔
離》によって感染を抑え込もうとしているためだ。8割が無症候または軽症で
終わる感染症を、なぜそこまで恐れるのか。基礎疾患があった有名人の死を、
「突然死」が頻発しているように報道するメディアの魂胆は、要するに《情報
が売れればよい》ということだろうが、まさに「幽霊の正体見たり枯れ尾花」
という一句がピッタリの様相を呈している。こんなことがいつまでつづくのだ
ろうか。
(2021.2.4)

「ここまでわかった新型コロナ」(上久保靖彦、小川榮太郎・WAC・2020年)要約・16・《■K型が一月十三日に入ってきた証拠》

■K型が一月十三日に入ってきた証拠
【上久保】武漢閉鎖は1月23日だ。武漢の人口は約1300万人、武漢閉鎖の噂が流れた途端に、500万人が武漢から中国、世界全土に出て行って、その日には、成田に9000人が移動したと武漢市長が言っている。また、2月3日の衆院予算委員会では、森雅子法相が1月20日から2月1日までの10日間で、中国から341800人が訪日していると答弁している。武漢市閉鎖」までの4日間で、武漢市から直行便で1700人が日本に入国しています。外務省に調べてもらったところ、11月から2月28日まで中国からの訪日人数は184万人だった。クルーズ船は2月3日入港だが、その前にこれだけ入っている。
【小川】つまり、変異初期のS型の段階で、中国から100万人単位で人が来て、銀座、心斎橋、京都、福岡・・・どこでも繁華街では濃厚接触している。11月から1月までにS型の曝露もすごい数がいて、K型が入る1月中旬からも制限していないからフリーで入ってきた。インフルエンザ曲線が日本中で1月13日近辺の週で急滅しているから、K型はそこで入った。
【上久保】クラスター班が何人で追跡しているかは知らないが、数百万人もの中国からの旅行者が訪日している。それを2月下旬から少人数で追跡して効果があるかどうか。クラスター追跡法はエボラ出血熱などには効果はあるだろう。新型インフルエンザに関しては研究中だ。
【小川】12月23日、S型の入ったときは、あまりくびれがないが、K型で、インフルエンザが突然日本から消える。なぜこんなに大きな差が出るのか。
【上久保】これはT細胞性の免疫を起こす力だ。S型ウィルスでできたT細胞免疫ではサイトカインが弱いので、インフルエンザの感染カーブの抑え方が弱い。一方、K型でできたT細胞免疫は充分な量のサイトカインを出すと考えられる。だから充分にインフルエンザの感染を抑えられたのではないか。しかし、実験室の中では検体がなければ調べられない。
【小川】要するに、ウィルス干渉の強さから逆算したということか。
【上久保】そうだ。
【小川】そこが仮説とされる所以だ。しかし、今回のインフルエンザは、例年より早くて強いと言われていた。それが例年の三分の一で収束したので、上久保説の妥当性を感じる。


■コロナに用心したからインフルエンザが流行らなかった?
【小川】コロナでみんなが用心したからインフルエンザも流行らなかったと、まことしやかに言われた。しかしコロナで日本中が騒ぎ出したのは2月に入ってからだ。インフルエンザ曲線を見ると、1月13日の週で急滅している。コロナで用心したことは関係ない。コロナなんか誰も知らないときに、インフルエンザは消えていた。
【上久保】アメリカは、インフルエンザのブームが例年になく大きかった。6万人も亡くなっている。
【小川】日本とは逆に、インフルエンザの方が猛威をふるってしまった。
【上久保】そうだ。だからコロナが入りにくかった。
【小川】これだけの相関性があるのに議論の俎上に載せない専門家たちはどうなっているのか。
【上久保】私どものモデル理論も証明されていくということは必要だ。時間がある程度経たないと、証明されてはいかないのは仕方がないかもしれない。
【小川】こういう議論は実証の方があとに来る。
【上久保】あとになったら分かる。科学者は必要性があるときには、大胆に踏み込んででも、予測スコアを出すべきだと思う。


【感想】
・上久保氏らの「集団免疫説」は、《時間がある程度経たないと証明されていかない》。だから《相手にされない》《無視される》ように見えるのかもしれない。ただ、インフルエンザとの相関性が《ある》ということは、事実が証明しているのではないだろうか。
・2月7日までの「緊急事態宣言」は、さらに1か月延長された。感染者の拡大が止まらないためだろうか。入院治療等を要する発症者(患者数)は6万人台から4万人台に、重症者は1000人台から900人台に「減少」《し始めているような》気がするのだが・・・・。
(2021.2.3)