梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

■じじい

 押し入れから高校時代の文集が出てきた。その中に、私の未熟な詩が載っている。
■じじい
あんなじじいに何ができるか
小さく禿げ上がった頭に
しょうゆにつけた手ぬぐいをまきつけ
小さく弱くつるはしをふるう
ぜいぜい口で息をしながら
目をしょぼつかせながら
つるはしをふるう
昔盛り出した胸の筋肉も
今はあばらだ
身体は乾き切り
時々、しょうゆの手ぬぐいで
頭と顔をなでまわし
つるはしの先端をじっと見つめる
あんなじじいに何ができるか
涙を浮かべている奴は誰だ
じじいは
目をしょぼつかせながらつるはしをふるう
【1961年2月】
 今から58年前(当時16歳)の作だが、このじじいは、私自身(自画像)に他ならない。そして、もう「つるはしをふるう」ことはできなくなった。
(2019.3.9)