梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

安倍首相の《汚点》

 安倍首相は、「首相主催で毎年4月に開いてきた'『桜を見る会』を来年は取りやめることを決めた」(「東京新聞」11月14日付け朝刊1面トップ記事)そうである。理由は「首相の地元支持者を多数招いていたとの指摘を受け『私物化』との批判が強まったため、中止表明で問題の幕引きを図ったとみられる」(同)らしい。
 主催者は首相自身だから、開催しようが中止にしようが独断で専決できると、安倍氏が考えているとしたら、甘い。「桜を見る会」は、1952年から67年間に亘って行われている公的行事である。これまで阪神大震災、東日本大震災、北朝鮮のミサイル発射等によって中止されたことはあったが、主催者自身が「私物化」と批判されたので中止とは前代未聞、公私混同の大失態という他はない。吉田茂首相から連綿と受け継がれてきたこの《伝統》を、私的理由で中止にすることについて、安倍氏はどう思っているのだろうか。例によって「一点の曇りもない」というのなら、中止する理由は毫もない。もし、「私物化」を認めるなら、その時点で政治家失格、ただちに議員辞職すべきなのである。合わせて、そのために要した費用の一切(税金)を、返済(国民に対して損害賠償)しなければならない。公的行事を独断(私的理由)で中止した責任を取るか、「一点の曇りもない」と強弁して、来年の中止を撤回するか、安倍首相に残された道は二つに一つしかない。まさに「進退は極まっている」のに、当の御本人は気づいていないのだから、空いた口がふさがらない。政治家としての《汚点》がまた一つ増えただけである。
(2019.11.14)