梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

人生はやり直せる

 東京新聞5月7日付け朝刊3面「この人」欄に「山谷で清掃活動を続ける元受刑者 藤澤丈明さん(73)」というタイトルで以下の記事が載っている。
〈東京・山谷でボランティアの清掃を約3年半、続けている。「路上のごみを拾って、見知らぬ人に感謝されると、うれしい」。週1回、空き缶や紙くず、たばこの吸い殻を黙々と拾う。「曲がりに曲がった人生」と振り返る。東京都荒川区生まれ。子どもの頃、両親が離婚してから道を踏み外した。盗みなどを重ねて、少年院や刑務所で長く過ごした。「どこの刑務所でも、すぐなじむから、ネズミと呼ばれた」と自嘲気味に言う。出所後は、煙突掃除や水商売、東京電力福島原発の除染作業など職を転々とした。一時、東京で路上生活も経験した。約5年前に「人生をやり直そう」と山谷の簡易宿泊所で暮らすことに。130余りの宿泊所が軒を連ねる昭和の日雇い労働者の街で、再起を目指した。山谷でボランティアをしている義平真心さん(49)に清掃活動に誘われたのが「ターニングポイントになった」と話す。「過去は変えられないけど、やり直しはできる」と言われ、心を揺り動かされた。「心のよりどころをつくってくれた場所、体が動くうちはやりたい」(志田勉)〉
 この記事で私が最も感動したのは、藤澤さんが、「(曲がりに曲がった)人生をやり直そう」と決意し、さらに24歳も年下の義平さんから「やり直しはできる」と言われたことに《心を揺り動かされ》、そして実際にそれを実現したという点である。すでに3年半にわたって清掃活動を続け《やめる気配はない》。その姿は、今、(少年院や刑務所で過ごし、「曲がりに曲がった人生」を送っている)人々の将来に、大きな希望と勇気を与えてくれるだろう。「人生はやり直せる」「その気になれば必ずできる」ことを《実証》しているからである。(2023.5.7)