梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

袴田事件・司法の責任

 「・・・元ボクサー袴田巌さんの再審が始まった。57年前の強盗殺人事件で死刑判決を受けたが、裁判をやり直す以上は無罪の公算が大きい。」(東京新聞10月28日朝刊「筆洗」)
 この再審で、もし無罪が確定したとなると、ただではすまされない。57年にわたって袴田さんを苦しめた「司法の裁き」そのものが裁かれなければならないからである。まず第一に、袴田さんが犯人でないとするなら、真犯人は誰なのか、司法は直ちにその追求を始めなければならない。第二に、袴田さんを犯人だと判断した司法関係者を明らかにし、損害を賠償すべきである。①1966年8月18日、袴田さんを逮捕した静岡県警の警察官、②1967年8月31日、みそ工場のタンクから血痕の付着した5点の衣類を見つけた捜査官、③1968年9月11日、袴田さんに死刑判決を下した静岡地裁の裁判官、検察官、④1980年12月、死刑を確定した最高裁の裁判官、⑤2008年3月24日、袴田さんの再審請求を認めなかった最高裁の裁判官、⑥2018年6月11日、再審開始を認めなかった東京高裁の裁判官、①~⑥の該当者は、その氏名を公表し、現況を報告しなければならない。袴田さんは、当初から氏名を公表され、犯人としてさらし者にされ、今もなお「拘禁症状」から抜け出せないでいる。無実の人を、そのような状態に追い詰めた彼らの責任は、限りなく思いのである。一人の一生を台無しにしてしまったのだから・・・。
 再審公判の結審は、来年4月以降とみられているが、無罪が確定した場合、上記の関係者たちは「贖罪」の覚悟があるのだろうか。自らの誤りを認め、謝罪・賠償をするのなら、結審を待つ必要はない。袴田さん、関係者らが「存命中」に、一日も早く実行すべきである。
(2023.10.28)