梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

「言語発達の臨床第1集」(田口恒夫編・言語臨床研究会著・光生館・昭和49年)通読・14

【要約】
I' 人への関心や愛着が育たなかったことに伴い、自分自身の体の一部や体の働きまたは外界の“物”を遊び相手にして育ってきたと考えられる行動。
189. 何でもなめる。
190. 何でも匂いをかぐ。
191. 食べものでないものを何でも口に入れる。
192. 何でも匂いをかいだり、なめたり、口に入れたりする。
193. じゅうたん、砂、でこぼこの壁などのように手ざわりのよいものを好む。
194. のりのようなベタベタした感触を好む。
195. 食べものを口いっぱいに含んで、飲み込まないで、人が見ていない時にペッと吐き出す。
196. 床に落ちているもの、紙、ボタン、プラスチックのおもちゃなどのものを口に入れてクシャクシャかんでいる。
197. しじゅう何か食べている。
198. 口の中にいつも食べものか、ひもなどを入れている。それで安定しているように見える。
199. 手をからませる。目の前で指をヒラヒラさせる。
200. 手指をからませ力を入れる。
201. 舌をチュッチュッと吸う。
202. 自分の頭を叩く。
203. つばきをたくさんためてクチュクチュいわせる。
204. 柱、ガラスなどに頭をぶつける。
205. くり返し手足を振る。
206. 上半身をゆする。
207. 手を噛む。
208. ピョンピョン飛び跳ねる。
209. 自分の髪の毛を引っぱる。
210. 鼻をほじる。
211. 性器いじりをする。
212. 爪かみをする。
213. 口の中で何かブツブツひとりごとを言っている。
214. 時々、急に大きな声を出して笑ったりする。
215. 「ウワッ、ウワッ」とか「キーキー」とか奇声を発する。
216. 手をズボンの中につっこんで出さない。
217. 物をたたく。
218. 紙などをやぶる。
219. 紙を見るとくしゃくしゃにする。
220. 紙をヒラヒラさせる。
221. 木の葉をとり、それを手に持ってヒラヒラさせる。
222. ある種の手ざわりのものを好む。
223. イスなどを噛んだりかじったりする。
224. 鍵、金具などのものにこる。
225. ボール紙、板、紙などに歯型をつける。
226. 鍵穴や細く空いている部分に砂、どろをつめてうめる。
227. ミニカーなどのおもちゃを自分の目の高さにして、構造を調べているかのように眺める。動かさない。
228. 手あたりしだいにものをさわって歩く。
229. 特定の物(ヒモなど)を持って離さない。
230. きまったおもちゃをいつまでもかかえて離さない。
231. つねに特定のものを肌身離さず持って歩く。
232. 特定のマーク、ワッペン、ミニカー、植物図鑑などを持って歩く。
233. 一定期間特定のおもちゃに執着する。寝床にもっていく。
234. 人がいても気づかず、おもちゃにひかれて次から次へと走るように動き回る。
235. 人よりもその人のしているアクセサリー、ボタン、時計などに興味をもつ。
236. 止まっている自動車などの方へとんでいってしまう。
237. 母親が買物に出かける時でも、おもちゃを出すとひとりで遊んでいる。
238. 歌をよく覚えており、メロディーなどはたしかである。
239. TVやCMなどのマークや商標を覚えている。
240. 教えないのに漢字、数字、文字を覚えている。
241. レコードのかけ方や録音機の操作などはすぐ会得する。
242. 機械などのものの構造の理解、分解などにすぐれている。


【感想】
 以上の項目には、自閉症の行動特徴といわれる「常同行動」「自傷行為」「奇妙なクセ」「興味の偏り」「優れた能力の片鱗」などが含まれている。それらは「人への関心や愛着が育たなかったことに伴」って生じる「行動」であり、これまでの「症状」とは区別している点が興味深い。つまり、それらは、ある種の学習によって身につけた「結果」であり、自閉「症状」の「原因」ではない、ということである。著者は、「人への関心や愛着が育たなかった」ことを、その原因としているが、では、その原因は何だろうか。一には、「育て方」など環境(外部)の問題、二には、「感覚障害」「脳機能障害」など子ども自身の内部の問題が考えられる。しかし現状では、そのいずれとも断定できる結論はでていない。「自閉症は治らない」ということだけは、通説になっているようだが・・・。
 いずれにせよ、「なぜ人への関心や愛着が育たなかったのか」という問題を根底に、どうすればそれが育つかを模索、実践的に究明することが、私自身の課題なのである。(2014.5.8)