梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

「日本国憲法改正草案・自由民主党」修正案・《1》

【前文】
◎草案
 日本国は、長い歴史と固有の文化を持ち、国民統合の象徴である天皇を戴いただく国家であって、国民主権の下、立法、行政及び司法の三権分立に基づいて統治される。
我が国は、先の大戦による荒廃や幾多の大災害を乗り越えて発展し、今や国際社会において重要な地位を占めており、平和主義の下、諸外国との友好関係を増進し、世界の平和と繁栄に貢献する。
日本国民は、国と郷土を誇りと気概を持って自ら守り、基本的人権を尊重するとともに、和を尊び、家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する。
我々は、自由と規律を重んじ、美しい国土と自然環境を守りつつ、教育や科学技術を振興し、活力ある経済活動を通じて国を成長させる。
日本国民は、良き伝統と我々の国家を末永く子孫に継承するため、ここに、この憲法を制定する。


◎修正案
 日本国は、国民主権の下、立法、行政及び司法の三権分立に基づいて統治される。
 わが国の歴史は長く、様々な紆余曲折を経て現在に至っている。先の大戦では多くの犠牲や荒廃を経験し、その後も幾多の大災害を被ったが、それらを乗り越えて発展し、今や国際社会において重要な地位を占めている。平和主義の下、諸外国との友好関係を増進し、世界の平和と安全に貢献する。
 日本国民は、基本的人権を尊重し、家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する。我々は、自由と規律を重んじ、美しい国土と自然環境を守りつつ、教育や科学技術を振興し、全国民の生活を豊かにする。
 日本国民は、我々の国家を末永く子孫に継承するため、ここに、この憲法を制定する。


《解説》
・草案には「日本国は、長い歴史と固有の文化を持ち、国民統合の象徴である天皇を戴く国家であって」という文言がある。しかし、憲法の根幹は「国民主権」という(民主主義の)理念にあるので、「長い歴史」「固有の文化」「天皇を戴く」などの文言は不要である。
・草案には「世界の平和と繁栄に貢献する」という文言がある。しかし、「繁栄」は時として「貧困」や「自然破壊」の要因ともなり得るので、不適切である。 
・草案には「国と郷土を誇りと気概を持って自ら守り」という文言がある。先の大戦において、日本国民は「国と郷土を誇りと気概を持って自ら守る」ために戦った。「大和魂」「散華」「玉砕」等々、多くの言辞が弄されたが、結果として三百万人余が犠牲になった。国と郷土を守るために「誇り」や「気概」は不要である。世界の平和と安全に貢献することこそが、国と郷土を守ることになるという「歴史認識」が肝要である。
・草案には「活力ある経済活動を通じて国を成長させる」という文言がある。戦後の日本経済は「高度成長」を遂げ、現在のGDPは世界三位である。大切なことは、活力ある経済活動を通じて、(国を成長させることよりも)まず、国民の生活を物心両面で豊かにすることである。
・草案には、「日本国民は、良き伝統と我々の国家を末長く子孫に継承するため」という文言がある。ここでいう「良き伝統」とは何か。その内容が明示されていない限り、「主観」の域をでるものではなく、不適切である。
(2016.7.16)