梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

「日本国憲法改正草案・自由民主党」修正案・《3》


◎草案
【第二章 安全保障】
(平和主義)
第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動としての戦争を放棄し、武力による威嚇及び武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては用いない。
2 前項の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない。
(国防軍)
第九条の二 我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するため、内閣総理大臣を最高指揮官とする国防軍を保持する。
2 国防軍は、前項の規定による任務を遂行する際は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。
3 国防軍は、第一項に規定する任務を遂行するための活動のほか、法律の定めるところにより、国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動及び公の秩序を維持し、又は国民の生命若しくは自由を守るための活動を行うことができる。
4 前二項に定めるもののほか、国防軍の組織、統制及び機密の保持に関する事項は、法律で定める。
5 国防軍に属する軍人その他の公務員がその職務の実施に伴う罪又は国防軍の機密に関する罪を犯した場合の裁判を行うため、法律の定めるところにより、国防軍に審判所を置く。この場合においては、被告人が裁判所へ上訴する権利は、保障されなければならない。
(領土等の保全等)
第九条の三 国は、主権と独立を守るため、国民と協力して、領土、領海及び領空を保全し、その資源を確保しなければならない。


◎修正案
【第二章 戦争の放棄】(現行憲法を適用する)
第九条(現行憲法の条文を適用する)
③前項の規定にかかわらず、領土、領海及び領空を保全し、その資源を確保するために、自衛隊を保持することができる。
④自衛隊は、前項の任務を遂行する際は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。


《解説》
・草案では、第九条に(平和主義)という見出しを付けながら、第九条の二では(国防軍)を新設しており、一貫性を欠いている。また、第九条の三では、(領土の保全等)が新設されたが、独立国としては「言わずもがな」の内容であり、最高法規の条文には不要である。
・そもそも「平和主義」とは、国内・国外を問わず、紛争を解決する手段として武力を行使しないという理念であり、さればこそ現行憲法では「戦力を保持すること」及び「交戦権」が否定されている。
・草案では、「国防軍」を新設し「我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するため、内閣総理大臣を最高指揮官とする国防軍を保持する」という文言がある。これは、第九条の(平和主義)に相反する矛盾である。国の平和と独立、国民の安全は「国防軍」という戦力ではなく「平和主義」という《理念》によって「確保」されなければならない。事実、我が国は戦後70余年にわたって、「不戦」を貫き、一人の戦死者もだすことがなかった。
・草案の「第九条の二 3」には「国防軍は(略)国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動及び公の秩序を維持し、又は国民の生命若しくは自由を守るための活動を行うことができる」とある。しかし、国防軍が「武力行使」という活動を行っても、国際社会の平和と安全を確保できないことは、我が国の場合と同様である。むしろ、国際社会の平和と安全が脅かされ、国民の生命若しくは自由が失われるおそれの方が大きい。なぜなら、「武力行使」とは相手の生命を奪うことに他ならないからである。紛争は、つねに自己を正当化し、相手の主張を否定する。双方の立場を理解し、認め合うことこそが「協調」であり、そのことによってはじめて「公の秩序」が生まれるのである。
・現行憲法においても、我が国の「自衛権」は、(国際法上)認められている。修正案では、そのことを明示するために、自衛隊の項を新設した。