梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

「日本国憲法改正草案・自由民主党」修正案・《2》

《日本国憲法改正草案・自由民主党》修正案・《2》
【第一章 天皇】
◎草案(修正該当部分) 
(天皇)
第一条 天皇は、日本国の元首であり、日本国及び日本国民統合の象徴であって、その地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく。
(国旗及び国家)
第三条 国旗は日章旗とし、国歌は君が代とする。
2 日本国民は、国旗及び国歌を尊重しなければならない


◎修正案・1
第一条(現行憲法の条文を適用する)
第三条(削除する)


《解説》
・草案には、「第一条 天皇は国の元首であり」という文言がある。「元首」とは「行政の長として対外的代表権を持つ存在」のことであり、「国政に関する権能を有しない」天皇が元首とはなり得ない。
・草案では、(国旗及び国歌)の条文が新設されている。「日本国民は、国旗及び国歌を尊重しなければならない」という文言があるが、【第一章 天皇】の中に新設することは不適切である。また、〈信条において差別されない〉〈思想及び良心の自由〉をもつ日本国民が「国旗・国歌を尊重しなければならない」という義務はない。それは国民一人一人の自由であり、憲法において保障されなければならない。


◎修正案・2
 【第一章 天皇】を廃止する。


《解説》
・「大日本帝国憲法」下にあった1946年1月1日、昭和天皇は「新年ニ當リ誓ヲ新ニシテ國運ヲ開カント欲ス國民ハ朕ト心ヲ一ニシテ此ノ大業ヲ成就センコトヲ庶幾フ」という詔書を官報により発布した。その内容の一部に「朕ト爾等国民トノ間ノ紐帯ハ、終始相互ノ信頼ト敬愛トニ依リテ結バレ、単ナル神話ト伝説トニ依リテ生ゼルモノニ非ズ。天皇ヲ以テ現御神トシ、且日本国民ヲ以テ他ノ民族ニ優越セル民族ニシテ、延テ世界ヲ支配スベキ運命ヲ有ストノ架空ナル観念ニ基クモノニモ非ズ」という文言がある。そこでは、天皇と国民は終始、相互信頼と敬愛によって結ばれ、神話とか伝説によって生まれたものではない、天皇は現御神である、日本国民は他の民族より優れており世界を支配する運命をもっているなどという架空の観念に基づくものではない、と述べられており、いわゆる「人間宣言」とみなされた。つまり、昭和天皇は「第一條 大日本帝國ハ萬世一系ノ天皇之ヲ統治ス」「第三條 天皇ハ神聖ニシテ侵スヘカラス」といった「大日本帝国憲法」を貫いている「天皇主権」を、自ら否定したのである。その年の11月3日に「日本国憲法」が制定され、天皇は「象徴」という地位に位置づけられたが、天皇が人間であることに変わりはない。しかし、「象徴」であるために「国政に関する権能を有しない」。天皇は人間であるにもかかわらず、「参政権」を剥奪されている。事実、天皇及び皇室の「選挙権」は停止されてきた。これは「基本的人権」の侵害であり、「国民主権」の理念に叛する。
・したがって、天皇を「象徴」という地位(立場)に置くことは、不適切であり【第一章 天皇】は廃止すべきである。
・天皇家は、代々受け継がれ125代を迎えているが、「神話と伝説」によって生まれた歴史が含まれていないとは断定できない。まして「神聖にして侵すべからず」といった観念は、天皇自身によって否定されている。また、わが国で125代を迎えている家族は、天皇家に限られない。すべて日本国民の家族が同等の歴史を経ているからこそ、現代があるのである。
・今上(平成)天皇は、ここ数年来「譲位」(生前退位)を希望されている由、これを機会に「象徴」という地位、皇室という立場を撤廃し、国民の一人として「主権者」の一員に加わるべきである。(2016.7.17)