梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

「ここまでわかった新型コロナ」(上久保靖彦、小川榮太郎・WAC・2020年)要約・24・《■免疫がなかったイタリアの医者の悲劇》

■免疫がなかったイタリアの医者の悲劇
【小川】今回、医療現場で若い医師が、イタリアなどでかなり犠牲になった。怖がる人はたくさんいるだろう。
【上久保】これは国を閉ざして、免疫が正しく形成されなかったからだ。医師自身がK型に感染できていなかった可能性がある。そこにコロナの感染者がいっぱい押し寄せてきた。院内はウィルスがいっぱい飛散している。だから極めて大量に暴露して、即死に近い形になってしまった。「免疫がない状態での大量暴露」という現象だと推測している。
【小川】武漢に始まって、アメリカ、イタリア、イギリスも院内の感染爆発が多かったと思うが、それはウィルス自体の毒性が日本より強いというよりも、ウィルスが集中して押し寄せて、量によって変わるのか。
【上久保】ウィルスの毒性はどちらにしても非常に強い。免疫がなければひとたまりもない。変異で毒性が強くなるとか、逆に弱毒化するという事はない。免疫ができればうつらなくなる、軽症で済む。免疫がなければ重症化するし、死ぬ。イタリアなどの病因で生じたのは、部屋も患者でいっぱい、人工呼吸器もなくなる、重装備等の医療物資も不足して、K型の免疫を持っていない医師が診察し続けなければならなかった可能性がある。切羽詰まったなか、ウィルスが大量に発生していたのだから暴露するに決まっている。肺でウィルスが増殖した可能性があり、そのため陽性になった途端即死に近い状態になったのかもしれない。
【小川】ウィルスが体にはいると、量が少ないと大丈夫だったり、多いと症状がひどくなるのか。
【上久保】ウィルス量は当然重症化や死亡と関係がある。免疫が全くない、高齢である、重篤な基礎疾患があるなどの場合にはウィルス量が少なくても倍加時間が長くなるだけで死亡することもある。
【小川】免疫形成がうまくできていないところに大量に暴露して、若い医師たちが続々と亡くなったという事だったのか。
【上久保】そうだ。さらに欧米ではADE(抗体依存性感染増強)が起こってしまった。ADEは極端な症状が出るから、ますます恐怖を掻き立てることになった。
【小川】要するに、K型を飛ばすという不自然なことをしたからだ。
【上久保】そうだ。たった1か月の差だ。たった1か月、へたなことをしたから世界中でとんでもない現象が起きてしまった。


■渡航制限で感染爆発が起きた
【小川】今も日本では自粛モードが抜けきれない。
【上久保】閉鎖を続けていると再び感染爆発が起こる。4月の終わり、遅くともゴールデンウィーク明けには、渡航制限を解除できると言ってきた。小川先生から政府にも伝えていただいた。
【小川】しかし、マスコミ、一部の学者、都知事ら一部首長の、移動するな、飲食店に行くな、検査しろというキャンペーンは強力で長続きしている。
【上久保】日本政府はGoToを推進、指定感染症も8月下旬に安倍総理が見直しを表明、10月、11月から感染爆発が生じる可能性は低くなったと思う。
【小川】それ以外の点では、日本はどうしたらよいのか。
【上久保】開国だ。8月に開かないとダメだ。これ以上閉じていたら、えらいことになる。
【小川】海外とは渡航制限をなしにする。
【上久保】日本を開くのだ。入ってきてもまだ大丈夫だ。科学者がそんな断言をすべきではないと怒られるかもわからないが。命がかかっている。だから断言しているのだ。国を開かずに、免疫形成に不自然な穴を開けたら、欧米を直撃したのと同じ現象が日本でも起きる。永久に閉めておくことはできるのか。ますます免疫がなくなっていく。免疫は閉めれば閉めるほど廃れていく。企業は倒産し、自殺者は増える。私は科学者だから、こんな社会問題に断言などしたいはずがない。しかし、先生と私は、渡航制限解除が可能だと、意見書を提出していた。
【小川】しかし世界がみんな怖がっているから、世界の側が来ないかもしれない。国内の移動は大丈夫か。
【上久保】大丈夫だ。離島や過疎地、非常に厳格に隔離された老人施設だけは免疫形成が不充分なので、慎重に見極める必要がある。


【感想】
・要するに、国を閉ざしたり渡航制限をすると、国民の免疫形成が不充分になり、感染爆発が起きる、ということが強調されている。上久保氏らは2020年5月には渡航制限解除を政府に提言したそうだが、実際はどうだったのか。コロナウィルスの場合、感染を「避ける」のではなく、積極的に「曝露」し、免疫を獲得することが《何よりも》重要であるということがよくわかった。しかし、そのような科学的《知見》は、為政者の中では受け入れられないようである。指定感染症の見直しは行われずに2022年2月まで延長された。GoToキャンペーンも中途半端に終わった気がする。これからどうなるのだろう。
(2021.2.12)