梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

「ここまでわかった新型コロナ」(上久保靖彦、小川榮太郎・WAC・2020年)要約・23・《■国を閉めたから劇症化した》

■国を閉めたから劇症化した
【上久保】コロナに関しては何もしたらダメだ。肺炎が起こったら、肺炎に対処したらいい。
【小川】従来のように共存しながら、重症者を防ぐだけが一番よいというわけか。
【上久保】コロナの場合は慌てない方が良い。コロナであることをまず見極める。
【小川】しかし、武漢では、医師も感染して、若い医師も亡くなった。あれは恐怖だ。ただのウィルスとは到底思えない。
【上久保】慌てないことだ。コロナなのか、インフルエンザなのか、エボラのように非常に凶暴なものかを見極める。今となってはコロナ=風邪への対処として大きな教訓とすべきだと思う。根本は、武漢の数々の衝撃映像を見た途端に、世界各国が国を閉めたことが間違いだった。国を閉めたらロックダウンせざるを得なくなり、免疫が作れなくなるから、むしろ劇症化し易くなる。ハイリスクになれば、ロックダウンして、人の移動を制限して、感染が広がるスピードを落とす以外対処しようがなくなるからだ。しかし、永遠に無菌室に世界中の人が入っていることは不可能だ。
【小川】世界の常識と全く違う。
【上久保】みんな必死だったから偉そうなことは言えない。私だってその場になればどう判断したかわからない。しかし我々は、インフルエンザの流行カーブをキャッチして予測理論を立てた。それが相関性の高い結果を出している。今は遺伝子解析もできているから、インフルエンザと関連させる必要はないが、次に新型コロナが来るのが2030年かもしれないし、2029年かもしれない。さらに皆で研究するしかない。
【小川】新型コロナでは世界が閉鎖した事が大きな間違いであった。しかし、エボラとかSARSみたいなものであれば、国内に入れないように空港閉鎖するのは正しいのではないか。
【上久保】その場合は、こちらが閉めるのではなく発生した場所を閉鎖するしかない。こちらが閉鎖してはダメだ。
【小川】なぜなのか。
【上久保】コロナなどの無症候性の多い感染症は、我々の知らない間にほぼ確実に入っているからだ。エボラなどの場合は発生した場所を閉鎖する。我々は当然そこには行かない。【小川】激烈な症状を伴うウィルスは閉じ込める。無症候のウィルスは平常通りにしないとむしろ危険というわけか。ただし10年に一度は、通常より怖いウィルスになる。
【上久保】そうだ。2030年だけでなく毎年、インフルエンザの流行カーブを見ておくべきだ。ロックダウンしたせいで十年サイクルとは限らないから。何をするにも慎重でないとダメだ。ここでS型が入った、K型が入ったと確認する。でも確認したら何もしない。コロナのような感染症の場合であれば、世界中何もしない。閉鎖したらダメだ。
【小川】それでも新型コロナの発生は確認しておく必要がある。医療体制を整え、どの国やどの地域のリスクが高いかによって医療資源を集中したりするため、迎え撃つ態勢を整えるために。
【上久保】その通りだ。インフルエンザの流行カーブの解析は、世界中でやるべきだ。スパコンより早く予知できる可能性もある。医療資源の分配を考えることができるのが大きい。


【感想】
・国立感染症研究所の「インフルエンザ流行曲線」を見ると、2019年から20年にかけての感染者数は、2018年から19年にかけての感染者数に比べて《半減》している。では、2020年から21年にかけての感染者数はどうか。驚くべきことに、グラフでは現れないほど少数(おそらく全国で毎週100人以下)なのである。この現象もまた、新型コロナによるものなのだろうか。2021年は20年に比べてさらに減少していることはたしかだ。コロナとインフルエンザが《同時流行するかもしれない》と不安を煽った専門家、メディアの面々は、現状をどう見るのか。
・上久保氏は、感染症対策は、発生場所を閉鎖する(出入りできないようにする)ことがすべてで、「入ってこないように」国を閉ざすことは間違いだと指摘している。なぜなら、「気づいた時にはもう遅い」からであり、見えないうちに感染は始まっているからだ。感染(うつされること)を防ぐのではなく、発症・重症化をを防ぐことの方が重要であるということはよくわかった。そのためには免疫が不可欠であるということも。
(2021.2.11)