梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

私の戦後70年・遠足

 毎年、春・秋にある小学校の遠足は、その日一日勉強をしなくてよいというだけで、楽しかった。一年・井の頭公園、二年・向丘遊園地、豊島園、三年・ユネスコ村、浜離宮、四年・相模湖、江の島、五年・稲毛海岸、高尾山、六年・城ヶ島、箱根と重ねられた楽しい思い出がアルバムに残されている。しかし、一年・春の一枚だけが欠けている。その日は朝から雨模様で、遠足は「中止」という連絡が来た。私は定時にランドセルを背負って登校したが、途中で上級生が「おまえ、一年だろ。みんな遠足に行ったぞ」と言う。「今日は中止だもんね」と言い返したが、「行ったもんね」と押し問答、辺りに一年生の姿は無く、私は泣きながら帰宅した。今思えば学校の連絡ミス、私同様に初めての遠足を逃した級友が数名いたらしい。当時はいたって鷹揚、そのことを騒ぎ立てる保護者は一人も居なかった。運が悪かったと諦める他はないのである。(2015.4.11)