梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

防衛大生の「歴史認識」

 東京新聞朝刊発言欄に「大東亜戦争は侵略行為ゆえ」というタイトルの記事が載った。投稿者は93歳の阿伽陀しげみ氏、私は三年前にも氏の投稿(「靖国参拝は戦争の美化」)から多くを学んだが、今回も深い感銘を受けた。本紙特報面、映画「第九条」の紹介記事に触れ、防衛大生が「大東亜戦争は侵略戦争ではない。白人からアジアを守った」と言うのに対して、明治の征韓論から真珠湾攻撃に至る「侵略の系譜」の要点を述べ、「支配者が白人から日本に変わっただけのことです」と結んでいる。
 防衛大生と氏の「歴史認識」の《差》は何に起因するのだろうか。戦争を実体験した氏と、その実相(敗戦)を知らない防衛大生の間には、越えようのない「溝」があるのだろうか。かつての日本は「八紘一宇」「大東亜共栄」といった理念で防衛を図ろうとしたが頓挫した。その皇軍の思いが未だに防衛大生に引き継がれていることはないか。防衛大生(の身分)は、国家公務員(自衛隊員)であり、入隊に際して「私は、防衛大学校学生たるの名誉と責任を自覚し、日本国憲法 、法令及び校則を遵守し・・・」という宣誓を行っているのだから、「憲法第九条」の平和主義を貫くことは当然である。国際紛争解決の手段として武力を行使しないという理念を堅守しつつ、新しい防衛のあり方を追求すべきである。防衛大生には、国民の多くが、災害時における自衛隊の救援に期待し、その貢献に感謝していることを前提に、卒業後も、戦争をしない「自衛官」になることを目指してもらいたい。
(2016.12.21)