梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

私の戦後70年・テレビ

 昭和35年以降、日本の家庭にはテレビが爆発的に普及、老いも若きもその魅力に取り憑かれた。とりわけカラーテレビが出現することによって日本人の「色彩感覚」は一変したと思う。私の父は、多くの子どもたちがその画面を食い入るように見つめている様子を見て「これで日本はダメになる」と呟いたが、事実、日本人の「想像力」は確実に衰退し、「百聞は一見に如かず」といった風潮が蔓延っている。「活字文化」(書物)から「音声文化」(ラジオ・テープ・CD)を経て「映像文化」(画像・DVD)へと辿る道筋の中で、私たちが失ったものも多い。「見れば解る」という「決めてかかり」は危険である。それは「氷山の一角」であり、事象の本質ではない(かもしれない)。「集団的自衛権」の行使が容認され、日本は再び戦争への道を歩もうとしているが、そこには安易な「ゲーム感覚」が窺われる。いかなる戦争も「犯罪」であり得られるものは何もないという「想像力」を育てることができるかどうか、そのことが今、私たちに問われているのである。(2015.4.26)