梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

能登半島地震発生から1週間

 能登半島地震が発生してから1週間が経過した。これまでの死者128人、不明者195人、孤立集落には2300人が取り残されている。今、最優先で行わなければならないことは何か。いうまでもなく「人命救助」だ。不明者の救出に全力を注ぐべきだが、それと併行して重要なことは、これ以上の死者(関連死)を出さないことである。地震・津波による直接死からは免れても、水、電気、食糧など「生命維持」の条件が整わないばかりか、感染症が蔓延しつつあるといわれる避難所では、高齢者、病身者、乳幼児など弱者を安全に守ることができない。道路が寸断し、物流が滞っている現状では、日常の生活環境を短時間で取り戻すことは不可能だろう。これ以上の死者を出さないためには、まず、弱者を被災地に留まらせないことが重要である。物資を被災地に送ることよりも、被災地の人々を安全な場所に移すことが優先されなければならない。目を覆いたくなるような被災地の現状を元に戻すのは容易ではない。交通網の復旧、停電・断水の復旧、仮設住宅の設置、瓦礫の撤去、道路整備、施設・建物の建築等々、市街の復興までには、相当の時間(年月)がかかるだろう。その復旧、復興に関われる人たち(自衛隊、消防士、警察官、土木建設業者など)だけを被災地に残して、一般の住民もまた、生活環境の整った安全な地域、安全な施設に待避すべきなのだ。
 そのことを可能にするために何が重要か。国および自治体からの支援である。被災地住民の移送、待避生活にかかる費用のいっさいを負担することだ。「そんな前例はない」と一笑に付されることは承知しているが、では「これ以上の死者を出さない」ためにどうするか、対案をうかがいたい。
(2024.1.8)