梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

戦争が起きたら国・地域のために戦うか

 「東京新聞」朝刊(4面・国際・総合)に《不安な世界 兵役手放せず ウクライナ侵攻受け 軍人求める》という見出しの記事が載っている。冷戦後、欧州を中心に徴兵制廃止の動きが加速したが、2014年、ロシアのウクライナ南部クリミア半島併合で流れが一転、リトアニア、スウェーデンなどで徴兵制が復活した、とのことである。現在、世界の兵役は、スイス、イスラエルが「国民皆兵制」、ブラジル、韓国、北朝鮮が「徴兵制」、ノルウェーが「選抜徴兵制」、米国が「志願制」、中国は「徴兵制と志願制の併用」、日本は徴兵制は違憲とされるので、志願制の「自衛官」である。兵役義務が事実上ある国と、ほとんどない国を塗り分けた世界地図をみると、「ほぼ半分ずつ」程度に思われるが、今後、日本でも兵役の必要性が取り沙汰されるかもしれない。記事には「戦争が起きたら国・地域のために戦うか」という問いに「はい」と答えた国民の割合(%)(「世界価値観観調査」による)も載っていた。それによると日本は約17%、ウクライナは約58%、米国、スイスは約60%、フランスは約65%、韓国、ロシアは約68%、台湾は約78%、スウェーデンは約80%、ノルウェー、中国は約88%であった。他の国が過半数を超えているのに、日本の値は桁外れに低く20%を割っていた。素晴らしいことだと、私は思う。調査は2017年~22年に行われたものだが、戦後80年近く経っても「不戦の理念」が国民の間に染みわたっている証ではないだろうか。日本の国民は「戦争では国を守れない」ことを知っている。日本は世界に向かって、戦争の「愚かさ」「虚しさ」、「戦争に勝利はないこと」を《堂々と》主張すべきだ。敗戦国として「第二次世界大戦」から学んだ貴重な教訓を、戦勝国をはじめ世界全体の国々に浸透させなければならない。この調査にはドイツ、イタリアのデータがなかったが、同じ敗戦国として国民はどのような反応を見せるか、知りたかった。
(2023.7.14)