梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

初夢

 自宅の1階玄関が気になって見に行くと、開け放しになっている。そうか、ここは開けておいても、上がり口に扉があるので、そこさえ閉めておけば不用心ではないか・・・、などと思いながら外に出てみる。いつもの家並みが続いているが、どこかおかしい。人の気配がないのである。そればかりか、大通りへ抜けるはずの道が行き止まりになっている。ここは袋小路ではなかったのに、いつのまに・・・、などと考えているうちに、それぞれの建物がたちまち廃墟、瓦礫の山に様変わりして、崩れかかってくる。危ない!そう叫んで走り出すと、果てしない広場に出た。そこは一面の緑色、といってもそこに植物はなく、白いペンキを混ぜたような不透明な世界であった。私の全身も緑色になって、四角い大きなプールのような所に身を置いている。そこはかつてテルマエ(公衆浴場)のあった場所らしい。今でも生暖かい液体で満たされている。下半身をその液体に浸かりながら、私は考えている。こんなはずではなかった。周りには誰も居ない・・・、居るに居るがとても人間(の姿)とは思えない。あちこちを彷徨いながら「助けてくれ」と言うだけで、かげろうのように揺れている。いったい何が起きたのか。・・・・・・。とうとう地球が破壊される日が来たことはたしかだ。
 ・・・・・、というのが私の初夢である。今年は良い年になりそうだ。何しろ初めに最悪夢に見舞われたのだから、最低でもそれ以下になることはないだろう。
(2020.1.2)