梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

《醜悪な画像》

 今や、テレビはもとよりインターネットの記事に至るまで《醜悪な画像》が氾濫している。《醜悪な画像》とは何か。①それを目にしただけで、思わず吐き気を催すような、耐え難い画像である。②それを見ると、暴力的に「視覚神経」が冒される光、光線の画像である。様々な事件、事故による凄惨な場面は「ブルーシート」で覆う方法は常道だが、堂々とあからさまに露呈する《醜悪な画像》が、私には耐えられない。①は、食品会社、薬品会社、整形外科医院のCMに多い。②は、光(極彩色)の点滅、過激なコマ送り、ほとんど読み取れないテロップ等々、ほとんどのCMで見ることができる。
 視聴者はそれらを「あたりまえ」のこととして「見せつけられ」、自分の感性が「じわじわと」破壊され崩壊していくことに気がつかない。
 もちろん、戦後まもなく日本の社会が貧しかった時代には、凄惨な場面を覆い隠すなどの余裕はなく、事件・事故現場は晒されていた。1951年に起きた桜木町事故では窓から逃げ遅れて焼死した乗客の姿(の写真)が「そのまま」新聞で報じられたほどである。また、当時の写真雑誌では、サイパン、硫黄島などで戦死した兵士の姿、広島、長崎の原爆被災者の姿も「そのまま」見ることができた。
 実生活においても、猫や犬の「野ざらし」にされた姿は、日常的であり、私自身も小学生の時、近くを走る省線電車の踏切で、轢死体を目にしたことがある。60年余り過ぎた今でも鮮明に焼き付いているので、よほどの衝撃を受けたと思われる。
 しかし、そうした経験は私自身の成長・発達にとっては、大きな役割を果たしたかもしれない。戦争は「絶対悪」であり、「死」は、つねに「生」と隣り合わせにあることを学んだのだから・・・。
 ただ、②の画像は(日本ではおそらく)1990年代に入って作られたものであり、その根底には「サブリミナル効果」が潜んでいるに違いない。ウィキペディア百科事典には、《1995年9月26日に日本放送協会(NHK)が、1999年には日本民間放送連盟が、それぞれの番組放送基準でサブリミナル的表現方法を禁止することを明文化した。》(「サブリミナル効果」より引用)とあるが、視聴者にはそれをチェックする手段がない。すべては「あなたまかせ」、情報提供者の判断(良識)に委ねる他はないのである。どうにかなりませんか!?。
(2019.6.10)