梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

脱テレビ宣言・検証・《テレビ業界の一億総未熟化時代》

  「夫婦げんかは犬も食わない」というが、テレビ芸人の夫婦が「離婚」したところで「何の不思議もない」のに、ましてその原因が夫の「浮気」だったとすればなおさらのこと、〈陣内離婚“すべては僕の責任”浮気謝罪・・・紀香に未練涙浮かべた会見全容〉(日本テレビ・3月25日)などという番組を「垂れ流している」スタッフ並びにキャスト、加えてその視聴者(私自身も含めて)は、まさに「犬」以下の存在に成り下がった、と言っても過言ではあるまい。中でも、開いた口がふさがらないというか、嗤う他はないというか、背筋が寒くなるというか、前代未聞の出来事は、夫の浮気が発覚した後、夫の両親、妻、妻の両親、合わせて六人が「今後のあり方」について家族会議を開いたということである。犬も食わない夫婦の「痴話げんか」に、双方の両親が「顔を出し」「口を出す」様子は、想像しただけでも「珍奇そのもの」、各自の立場をわきまえない「けじめのなさ」「未熟さ」に吐き気を催すほどだが、スタッフ並びにキャストは「何の不思議もなく」「当然のことのように」報道している姿勢もまた「未熟の極み」という他はない。今や、結婚も離婚も「保護者つき」でなければできなくなったということである。キャストの一人が(二人の離婚を)「実に、残念です」等とコメントしていたのも、白々しい。そのおかげで番組ができ、そのおかげでギャラをもらっている自分自身の「さもしい姿」に気づいていないのだろう。
 いずれにせよ、昔は「犬も食わなかった」事象に「よだれを流し」、「とるにならない情報」を「飯の種」にしている「テレビ業界」の退廃も「ここに極まれり」ということである。大宅壮一はテレビ・メディアによる「一億総白痴化」を危惧したそうだが、その前に「一億総未熟化」の時代が訪れたことは確かなようである。(2009.3.25)