梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

「安倍首相退陣」に関する武田邦彦氏の《所感》

 中部大学教授・武田邦彦氏が昨日(8月29日)のブログで、安倍首相の辞任表明について、科学者の立場から所感を述べている。そこでは、まず安倍首相は「立派な首相であった」とし、歴代の伊藤博文、吉田茂、池田勇人にも匹敵するA級クラスの「実力者」だったと評価している。その理由として、外交手腕が出色だったこと(歴代1位)、憲法改正を発議したこと、日銀総裁に黒田東彦氏を招いて積極的な金融政策を行ったこと(アベノミクス)等々を挙げている。外交を除いて、他の政策が中途半端に終わったこと(その実力を存分に発揮できなかったこと)の原因は、主としてマスコミや野党による妨害が激しかったことによる、また国民全体が「誠実さ」を失い、「嘘」を受け入れ、また国民自身も「平気で嘘をつくようになった」からだ、と述べている。国会で(憲法改正に関する)十分な論議が行われなかったのは、森加計問題や「桜を見る会」など《枝葉末端(枝葉末節)》の事柄に(マスコミ、野党が)拘って、妨害したからだと仰る。
 ここで、森友学園、加計学園、「桜を見る会」の問題が「枝葉末節」に過ぎないと断じた根拠は何か、ぜひ武田氏に伺いたい。
 事の発端は、もともと安倍首相自身が国会で「私や妻、事務所を含めて一切関わっていない。関係していたなら、首相も国会議員も辞める」と明言したことではないか。「首相も国会議員も辞める」という言辞は、単なる「軽口」では済まされない。さればこそ、「誠実な」国民は、その事案に関する「事実」(真実)を究明しようとしたのではなかったか。
いうまでもなく、首相や妻、事務所が国有地の売却に《直接》関わるはずがない。そのことこそ、「枝葉末節」の行為だからである。しかし事の本質は《国有地》の売却に関わっていることなのだ。まして(妻が)森友学園の「名誉校長」であり、(私が)「安倍晋三記念小学校」という名称で《関わっている》事実が明らかになったのだから、安倍首相はその時点で「首相も国会議員も辞め」なければならなかったのである。加えて、文書の改竄を強いられた官僚が自殺した。その責任を感じ、直ちに辞意を表明することこそが「誠実」というものであろう。
 私の所感は、武田氏の見解とは正反対、安倍氏は歴代首相の中で最も「不誠実」、最も「無責任」、《公私混同》の極み、D級クラスの「無実力者」だと思っている。在位期間が「最長」になったのは、周囲から見れば恰好の「操り人形」、記者会見に限らず「プロンプター」なしでは何一つ主体的に動けない、世間知らずの「お坊ちゃま」でしかなかった、ということである。
 政治家は未来について指針を示し、科学者は過去から真実を究明するという、武田氏の見解に異議はない。だからこそ、森加計問題や「桜を見る会」の「公私混同」が《枝葉末端にすぎない》と断じた、武田氏の根拠(過去の分析)をぜひ伺いたいのである。
(2020.8.30)