「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・35
2 文章における作者の立場の移行 文章の理論的研究は、これまで主として修辞学の中で行われてきたようである。文章に中に文の法則性を超えた独自の法則性をさぐって体系的な文章論をうちたてるという試みはほとんど行われていない。文法学と修辞学が、文章について全くちがった何の関係もない定義を与えていると云う... 続きをみる
「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・35
2 文章における作者の立場の移行 文章の理論的研究は、これまで主として修辞学の中で行われてきたようである。文章に中に文の法則性を超えた独自の法則性をさぐって体系的な文章論をうちたてるという試みはほとんど行われていない。文法学と修辞学が、文章について全くちがった何の関係もない定義を与えていると云う... 続きをみる
「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・34
第四章 日本語の文法構造・・その三、語と文と文章の関係 1 語と句と文との関係 【要約】 ● おーい。起立。暖かい。 などは、一語で話し手の一つの思想を表現したものとして《一語文》とよばれている。主語と述語をそなえているというのは、ある種の文の特徴であって、一つのまとまった思想が常にこのような... 続きをみる
「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・33
3 感動詞・応答詞・接続詞 【要約】 (a) (おい)、君。 (b) (ああ)、うまかった。 (c) (ちぇっ)、ばかにしている。 独立したかたちで使われる、話し手の呼びかけや感情を表現する語を、感動詞あるいは感嘆詞と名づける。この感動詞によって直接表現されている呼びかけや感情にはそれをひきおこ... 続きをみる
「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・32
c 助動詞のいろいろ 【要約】 ○「ある」「だ」 肯定判断、断定の表現に使われる。 ○「ない」「ぬ」 否定判断、打ち消しの表現に使われる。形容詞の「ない」から移行してきた「ない」と、「ぬ」の二つの系列がある。「ない」は形容詞と同じように活用し、「ぬ」は独自の活用をする。 この種の表現は、話し... 続きをみる
「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・31
【要約】 彫刻家ロダンは、彫刻や絵画が運動を表現する場合について、次のように語っている。〈「動勢とは一つの姿態から他の姿態への推移である」この単純な言葉が、神秘の鍵なのです。・・彼は一つのポーズから他のポーズへの推移を形に写します。最初のものが如何に知らず識らずのうちに第二のものに移って行くかを... 続きをみる
「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・30
【要約】 現在過去未来が相対的な関係だということを確認した上で、次に運動の相対性という問題を考えてみる。 ● 鳥が(飛んでいく) この場合は対象である鳥が動いており、話し手は静止している。 ● 森や林や田や畑 あとへあとへと(飛んでいく)。 この場合は対象は静止しているのに、話し手が汽車に乗... 続きをみる
「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・29
b 時の表現と現実の時間とのくいちがいの問題 【要約】 言語において過去や未来のありかたをとりあげる場合、日本語では助動詞を使う。ところが、現在形で表現する場合がある。 ● 宇宙は永遠に存在(する)。 ● 明朝行き(ます)。 現実から見て動詞の原形を「現在形」とよぶこと自体当を得たものではない... 続きをみる
「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・28
2 助動詞の役割 a 助動詞の認識構造 【要約】 わたしたちは、生活の必要から、直接与えられていない視野のかなたの世界をとりあげたり、過去の世界や未来の世界について考えたりしている。観念的に二重化し、あるいは二重化した世界からさらに二重化するといった入子型の世界の中を、わたしたちは行ったり帰った... 続きをみる
「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・27
f 終助詞について 【要約】 文の終わり、助動詞あるいはそれに相当する部分の後に使われる語である。その特徴は、感動、疑問、欲求などを純粋なかたちで表現することで、個人的な意識の自然なあらわればかりでなく、時には聞き手に対して強い欲求を示すような場合がある。 ● 今日は元日(か)。 立派だ(なあ)... 続きをみる
「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・26
e 接続助詞について 助詞がつながりの意識の表現であることから、対象のつながりを表現する助詞が二つの文をつなぐかたちをとって使われるようにもなる。これが接続助詞である。「から」は出発点・起点の意識を表現する格助詞だが、これが二つの事件の原因結果について使われるようになり、 ● それだ(から)私が... 続きをみる
「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・25
d 係助詞について 【要約】 直接対象から与えられた認識とは別に、話し手の持っている意識がかたちの上で打ち出してくる助詞を、係助詞と呼ぶ。昔から、係り結びといわれ《「ぞ・る」「こそ・れ」「思ひきや・とは」「は・り」「やら・む」これぞ五つの結びなりける》という歌でこれを記憶してきたが、口語では文の... 続きをみる
「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・24
C 副助詞について 【要約】 助詞による表現のうしろには、客観的なつながりと、そのとらえかたがかくれている。そのつながりも、とらえかたも、客観的な時間・空間・質・量と無関係ではない。副詞は、客観的な事物のありかたを抽象的にとりあげて表現するが、助詞の中にも副詞と似たとりあげかたをし、格助詞と組み... 続きをみる
「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・23
b 格助詞とその相互の関係 【要約】 ○「が」と「は」の関係 (a) 鳥(が)空を飛んでいる。→《現象的なつながり》 (b) 鳥(は)空を飛ぶ。→《必然的な本質的な関係》 (c) お茶(が)こぼれる。→《偶然的なつながり》 (d) お茶(は)机の上へおいてください。→《偶然が継続→固定的なつながり... 続きをみる
「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・22
第三章 日本語の文法構造・・その二、主体的表現にはどのような語が使われているか 1 助詞のいろいろ a 助詞の性格 【要約】 文の中の語と語とはつながりをもつものとして扱われる。このつながりのうしろには、語としてとらえられた対象のそれぞれの面の客観的なつながりがかくれている。 ● 人死す。 「... 続きをみる
「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・21
b いわゆる連体詞について 【要約】 いわゆる連体詞には以下のようなものがある。 (a) (ある)日の午後のことだ。 (b) あの人は(いわゆる)影べんけいだ。 (c) (さる)ところによい店があるという。 (d) (とんだ)ところへ北村大膳。 *動詞の連体形をそのまま使う場合 (e) きた... 続きをみる
「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・20
5 副詞そのほかのいわゆる修飾語 a 副詞の性格について 【要約】 ● (とても美しい)花だ。 「花」の具体的なありかたを示すために他の語をつけ加えることを、修飾するという。これはみかけの説明だから、これを絶対化して、これだけで解釈するとまちがった理解におちこむ危険がある。すすんで認識構造を分析... 続きをみる
「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・19
b 新しい分類の中に止揚すること 【要約】 「静かだ」「綺麗だ」を一語と見て形容動詞とよぶのはまちがいである。これは二語と見るべきである。静止し固定した変わらない属性において対象をとらえるときの語は、形容詞だけではない。漢語そのほかたくさんある。そのたくさんのうちで、特別に「く」「い」「けれ」と... 続きをみる
「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・18
4 形容動詞とよばれるものの正体 a 歴史的な検討の必要 【要約】 国語の教科書や参考書では、その大部分が「形容動詞」といわれるものをとりあげて説明している。 《活用表》 ● 静かだ(基本の形) 静か(語幹) だろ(未然形) だっ・で・に(連用形) だ(終止形) な(連体形) なら(仮定形) ○... 続きをみる
「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・17
d 複合動詞の問題・・・正しい意味での助動詞の使用 【要約】 動詞は、単独で使われるだけでなく、複合して使われることがある。動詞の下につけ加えて使うかたちの動詞を、これまでの教科書では助動詞とよばれる品詞の中に一括していた。(その中の性格のちがう語を区別する必要がある) 時枝誠記氏は、使役の助... 続きをみる
「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・16
c 属性表現の二つの形式・・動詞と形容詞の関係 【要約】 形容詞の活用形は、 ● 正しい(基本の形) 正し(語幹) く・あろ(未然形) く(連用形) い(終止形) い(連体形) けれ(仮定形) ○(命令形) のようなかたちをとり、動詞のように五十音図と関係を持つもにではない。 ● 花が咲く。(... 続きをみる
「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・15
b 形式動詞あるいは抽象動詞 【要約】 対象となっている属性について具体的に知らないとき、簡単にしか表現できなかったり簡単な表現で足りる場合には、形式動詞あるいは抽象動詞とよばれる種類の動詞が使われる。 ● どこに(ある)のか。どう(する)つもりか。どうして(いる)か。どう(なる)だろう。こう(... 続きをみる
「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・14
3 動詞と形容詞、その交互関係 a 活用ということについて 【要約】 動詞といわれる種類の語は、使い方によって語尾のはたちが変化する。これを活用と呼ぶ。 ●「書く」(基本の形) 「書」(語幹)・「書か」「書こ」(未然形)・「書き」(連用形)・「書く」(終止形)・「書く」(連体形)・「書け」(仮定... 続きをみる
「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・13
b ほかの語の一人称への転用 【要約】 落語「そこつ長屋」の熊さんは、八さんから「オイ、しっかりしろ。お前はいま浅草で行き倒れになっていたぞ」と言われ、あわてて現場にかけつけた。その死骸を見て、「ああ、たしかにおれだ。熊さんは泣きながら死骸を抱き上げ「この死骸はおれに違いないが、抱いているおれは... 続きをみる
「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・12
2 代名詞の認識構造 a 話し手の観念的な分裂 「あなた」「かれ」、「あれ」「これ」など、代名詞と称する一連の語がある。名詞に代わって使われるのだから、名詞と同じ意味を持っているかというと、決してそうではない。とりあげている対象は同じであっても、そのとりあげかたがちがっている。とりあげかたのちが... 続きをみる
「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・11
b 形式名詞あるいは抽象名詞 【要約】 普通の名詞は、話し手が対象の具体的なありかたをとらえた上での表現だが、対象を具体的なありかたとしてとらえられない場合、簡単にしか表現できない場合、簡単に表現して足りる場合には、抽象的に表現することがある。 どちらの場合にも、とりあげた対象は具体的に存在す... 続きをみる
「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・10
第二章 日本語の文法構造・・その一、客体的表現にはどんな語が使われているか 1 名詞のいろいろ 【要約】 a 対象のありかたとそのとらえかた 言語の構造を考えるとき、話し手が対象とする、現実の世界がどんな構造になっているかをときほぐしていまなければならない。 現実の世界では、いろいろな構成分子... 続きをみる
「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・9
3 時枝誠記氏の「言語過程説」 これまでの言語学では、言語を一つの道具として理解していた。頭の中に道具があって、これを使って思想を伝達すると考えた。この道具は、概念と聴覚映像とがかたく結びついて構成された精神的な実体と説明され、「言語」または「言語の材料」と呼ばれている。時枝氏はこの言語構成観あ... 続きをみる
「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・8
第二部 日本語はどういう言語か 第一章 日本語はどう研究されてきたか 1 明治までの日本語の研究 【要約】 古代の日本人の言語観では、私たちの言語表現が霊力を持っていて、表現された内容が現実化するものと考えた。これを「言霊」と呼んでいる。 明治以前に行われた日本語の研究を、現在の言語学者が無視... 続きをみる
「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・7
2 時枝誠記氏の「風呂敷型統一形式」と「零記号」 すべて認識は、認識の対象と認識する人間(主体)の存在を必要とする。お化けや天使は現実には存在しないが、これを認識する人間は自分の頭の中に空想の対象を想定しているのだから、この意味で対象が存在していることになる。対象をとらえた認識と、それに伴ってう... 続きをみる