梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

「ビンラディン容疑者殺害」は《愚かな話》

 インターネット・YAHOOニュースに「93%がビンラディン容疑者殺害支持=大統領の評価いま一つ―米調査時事通信 5月4日(水)8時25分配信」という見出しの記事が載っている。その内容は以下の通りであった。〈【ワシントン時事】3日発表の米ギャラップ社とUSAトゥデー紙の合同世論調査結果によると、国際テロ組織アルカイダの指導者ウサマ・ビンラディン容疑者殺害作戦を支持する人は93%を記録した。不支持は5%にすぎず、圧倒的に強い世論の賛同を得ていることを示した。党派別では、共和党支持者の97%、民主党支持者の95%が支持し、ほぼ同水準だった。2001年の同時テロを受けたアフガニスタン攻撃への支持は90%、03年のイラク戦争への支持は70%台後半だった。
 また、オバマ大統領、ブッシュ前大統領、米軍、中央情報局(CIA)の四つを挙げ、今回の作戦成功への功績を尋ねたところ、「非常に大きな功績があった」との回答は、米軍(89%)、CIA(62%)、オバマ氏(35%)、ブッシュ氏(22%)の順となり、現・前大統領2人への評価は相対的に低かった。同容疑者の殺害と拘束のどちらがより良かったと思うかとの問いでは、「殺害派」60%、「捕獲派」33%だった。調査は2日に全米の成人645人を対象に電話で行われた〉。十年前に「無差別同時多発テロ」の被害に逢ったアメリカ国民にしてみれば、その首謀者とみられるビンラディン容疑者を殺害することは当然、「やられたらばやり返せ」といったヤンキー精神が未だ健在であることを物語っている。だがしかし、それは「愚かな話」である。そもそも「9.11テロ」なるもの、何のために惹き起こされたか。政治的に見て、文化的(宗教的)に見て、説明できる理由は何一つとして無い。要は一点、「経済的理由」に絞られる。つまり「9.11テロ」によって、しこたま儲けた輩が居るのである。加えて、その報復のための「対タリバン」、「対フセイン」、「対アルカイダ」等々、「対テロ戦争」を企図することによって、またまた儲けた輩が居るのである。そのために、どれだけの「人間」が犠牲になったか。軍需業者が「経済的」に存続するためには、その商品である武器・弾薬を販売、消費してもらわなければならない。政治的(宗教的)な「大義名分」は単なるモチベーション、「ビンラディン」であれ、「フセイン」であれ、「ブッシュ」であれ、「オバマ」であれ、彼らは、軍需産業に踊らされた「操り人形」に過ぎないのである。たとえ、ビンラディンを「問答無用」で抹殺したところで、その代替は(操り人形である限り)無数に誕生するはずである。アメリカ国民は、今回の作戦成功に「非常に功績があった」のは「米軍」(89%)であった、と評価している由。その「米軍」とて「ただでは戦えない」ことを思い知るべきである。彼らに武器・弾薬、燃料を供給したのは誰か。表舞台には決して顔を出さない「死の商人」こそが、「戦争」を「発注」しているのである。(参考文献・「戦争病」(テレンス・リー・実業の日本社・2005年、「外注される戦争」(菅原出・草思社・2007年)「戦争」は、いかなる理由であれ、それが武器・弾薬という「兵器」を使って行われる限り、その売買で「しこたま儲けている」輩が居ることを見落としてはならない。したがって、アメリカ・報道各社の世論調査には以下の設問が加えられるべきだと、私は思う。「今回の作戦成功で、《しこたま儲けた輩》は誰だと思うか」
(2011.5.4)