梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

瀬戸内寂聴氏の晩節

 スポニチアネックス(10月14日配信)に「瀬戸内寂聴さん 謝罪」という見出しで、以下の記事が載っている。〈今月6日に福井市内で行われた死刑制度をめぐる日弁連のシンポジウムで、ビデオメッセージで「殺したがるバカどもと戦ってください」などと制度を批判したものの、犯罪被害者遺族らからやインターネット上で批判が殺到した作家の瀬戸内寂聴さん(94)が14日付の朝日新聞のエッセーで謝罪した。「バカは私」と題した文章。「今も世界の趨勢に遅れ、死刑制度をつづけている我が国の政府に対して、人権擁護の立場から発した意見であった」とし「バカども」は犯罪被害者を指すものではないと釈明した。しかし、SNS上で犯罪被害者をバカ呼ばわりしたととられ、炎上。「誤解を招く言葉を94歳にもなった作家で出家者の身で、口にする大バカ者こそ、さっさと死ねばいい。お心を傷つけた方々には、心底お詫びします」と謝罪した。〉
 瀬戸内氏は、比叡山延暦寺禅光坊住職と聞く。仏道を歩む人の「説法」としては最低・最悪の結果となったが、なるほど即身成仏は難しい。瀬戸内氏の謝罪によって、「死刑制度」廃止の機運は尻つぼみになってしまった。三悪道に趣くのは、死刑囚か、犯罪被害者か、瀬戸内氏か、それとも私自身か・・・。ちょっとした油断、傲慢で、瞬く間に晩節が汚されてしまうことを知るには、恰好の一件であった。(2016.10.15)