梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

「ここまでわかった新型コロナ」(上久保靖彦、小川榮太郎・WAC・2020年)要約・13・《■コロナに感染した人はインフルエンザに感染できない》

■コロナに感染した人はインフルエンザに感染できない
【小川】ウィルス干渉のメカニズムを詳しく説明してもらいたい。
【上久保】風邪をひくと熱が出る。なぜかというと、T細胞からサイトカインが出るからだ。サイトカインは、細胞から分泌される低分子のタンパク質で、生理活性物資、生理活性タンパク質とも呼ばれる。インフルエンザに感染すると、Tリンパ球がそれを認識してサイトカインを放出する。このサイトカインがウィルスをやっつける。反対に、コロナに感染した場合でも、それを認識して、サイトカインが出る。その場合、コロナですでにサイトカインが出ていると、インフルエンザが体内に入ってこれない。だから今回起こったことは、コロナに感染した人は、インフルエンザに感染できない。インフルエンザに感染した人は、T細胞免疫が起こって、熱が出る。そうすると、そこにはコロナは入ってこれない。これは人間では言われていないけれど、マウスのコロナとインフルエンザはそういう関係にあるということは論文にある。
【小川】なぜ人間では言われてこなかったのか。
【上久保】例年並みの状況の時には、人間がコロナに感染しているからインフルエンザに感染しないなんて、どうやって調べるか。調べられない。
【小川】人間を実験材料にできないということか。
【上久保】それもそうだが、パンデミックという巨大な現象については疫学でしか証明できない。実験室で個体を見ても、世界で展開している現象は想像がゆかない。
【小川】コロナの状況を把握するのにインフルエンザとの相関性からアプローチできるのは、インフルエンザは症状がはっきりしているからか。
【上久保】そうだ。
【小川】しかも世界中で定点観測がある。その感染カーブに異変が起きた。何かそこに原因があるが、それがコロナではないかと想定した。
【上久保】大体10年サイクルで変異による感染者増があると考えているが、かつて誰も調べてはいなかった。気がついていないことが多い。たまたま今回は武漢でパニックが起きたから気がついたが、気がつかないまま何となく終わっているということは多数ある。
【小川】過去にもインフルエンザの感染曲線がくびれたり、山が低い年など確認できるか。【上久保】ある。おおよそ10年サイクルであるのではと想像している。今回の山と同様、例年に比べ、非常に低い山が2010年にもある。今後、過去に遡って全部検証していくべきと思う。


【感想】
・たしか、「この冬はコロナとインフルエンザが《同時に》流行して大変なことになるかもしれない」といった情報が、週刊誌やテレビなどで取り沙汰されたことがあったようだが、そういうことはあり得ない(コロナに感染した人はインフルエンザに感染できないのだから)という、ウィルス干渉について説明されている。私自身はインフルエンザのワクチンを接種したが(そうした人も多いと思われるが)、今年のインフルエンザ感染カーブはどのようになっているのだろうか。例年は1~2月がピークだが、コロナの感染者ばかり増えていて、インフルエンザの患者数は増えていないのだろうか。そうした情報が出てこないのは何故だろうか。インフルエンザの代わりにコロナが2月にピークを迎え、桜の季節には収束を迎えるだろうと予測してる人もいる。いずれにしても3月下旬になれば結果が判るだろう。
(2021.1.30)