梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

「本当はこわくない新型コロナウィルス」(井上正康・方丈社・2020年)通読・11《Q 新型コロナウィルスの弱毒型と強毒型は何が異なるのですか?》

1《Q&A》
Q 新型コロナウィルスの弱毒型と強毒型は何が異なるのですか?
A ・新型コロナはS型やK型の弱毒型、G型やL型の強毒型などに大別され、伝染力や病原性が異なる。
・S型(セリン型)はコウモリ由来の古い弱毒型で以前から存在していた風邪のコロナに近く、全体の30%を占めている。S型から進化したL型(ロイシン型)は約70%を占め、感染力が強い。中国全土で62%、武漢で96%、日本では約60%で、欧州では大半がL型だった。(3月4日現在)
・ウィルスの突然変異はランダムに起こり、G型やL型だから重症化するわけではなく、強毒型と呼ばれている株でも症状は感染者の免疫的背景に大きく影響される。
・現在行われているPCR検査の大半は、コロナウィルス仲間に共通したRNA遺伝子の一部を検出するものであり、それだけではS型やL型などを区別できない。
・G型の新型コロナウィルスでは、スパイクに突然変異が生じてタンパク質中のアミノ酸がアスパラギン酸(略語はD)からグリシン(略語はG)に変化した。これによってスパイクの構造が安定化し、スパイクの数も約5倍多くなった。その結果、ウィルスとACE2受容体との結合力が約9倍も強くなり、最終的な感染力が約6倍強くなった。これが、新型コロナウィルスが強い感染力を持ち、重篤化率や致死率の高い新型変異株になった理由の一つだ。


Q ウィルス感染を大きく左右する“集団免疫”とは何ですか?
A ・集団中の大多数がウィルスに感染して免疫力ができるとウィルスは感染できなくなる。この現象を集団免疫と呼ぶ。コロナウィルスには様々な変異株があり、それらは無症状で経過する古い弱毒株のS型やK型と強毒のL型やG型などと呼ばれている。これらのウィルスが感染して免疫系が活性化されると、類似のコロナウィルスに対しても免疫反応を起こす。このような反応を「交差免疫反応」と呼ぶ。
・京都大学の上久保靖彦教授、吉備国際大学の高橋淳教授らは、新型コロナウィルスの種類や感染する時期によって集団免疫の獲得や重症化が大きく影響された可能性を報告している。
・日本では古くから土着の風邪コロナウィルスが住み着いており、これに加えて第1波として弱毒のS型やK型が上陸して液性免疫や細胞性免疫が活性化され、55%以上の国民が集団免疫を獲得したと推定されている。このため欧米からの帰国者とともに入ってきたG型やL型の強毒株に対する被害も強く抑制されたと考えられる。
・京都大学の山中伸弥教授が述べた“ファクターX”とは、“弱毒コロナウィルスによる集団免疫の獲得”が主な因子なのである。


【感想】
・日本の感染者数、死者数が欧米諸国に比べて「極端に少ない」のはなぜか、という問題に「真っ正面から答えている」のは上久保靖彦氏、高橋淳氏らであることを著者は認めているが、大半の専門家は未だに「不明」(謎)だとして、答えをぼかしているようだ。それはなぜなのだろうか。
・もし、「集団免疫」が感染防止を可能にするなら、感染者は「どんどん増えた方がよい」ともいえる。感染者を抑えれば抑えるほど「集団免疫」は獲得できなくなるのではないか。
どのように考えればよいか、私にはわからない。
・今年に入り、新型コロナの感染はますます拡大し、再び「緊急事態宣言」が出されたが、今は何型のウィルスが流行しているのだろうか。飲食店を夜8時までとし、それ以後の外出を自粛することを1か月続ければ、感染は治まるのだろうか。その科学的根拠は何か。何一つ明らかにされないままに、物事が決められ、時間だけが正確に経過する。
・はたして1か月後(2月7日)、日本の現状はどうなっているのか、その時が楽しみだ。
(2021.1.8)