梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

東日本大震災・《マスコミ・メディアの責任と役割》

 「東日本巨大地震」が発生してから1週間が経過した。その間の経緯をマスコミ・メディアはどのように報道してきたか。ちなみに、(私が購読している)東京新聞一面記事の「見出し」を羅列(抜粋)すると、以下の通りである。①3月12日(土)朝刊・「東北・関東大地震 仙台で10㍍津波 首都圏の機能マヒ 茨城の高校水没 原子炉停止で緊急事態宣言』、②3月12日(土)夕刊・「死者・不明千数百人 三陸海岸は壊滅 福島第1原発放射能漏れ 避難指示「10㌔」に拡大 福島第2も緊急事態宣言 長野で震度6強」、③3月13日(日)朝刊・「福島原発で爆発 初の炉心溶融 病院の3患者被ばく 避難指示 半径20㌔に拡大 宮城9500人安否不明、④3月14日朝刊「東日本大震災 宮城県警『死者は万単位』 気象庁 M9.0に修正 福島原発 3号機炉心一部溶融 160人被ばくの可能性 自宅屋根で2日漂流 60歳男性を海自救助 東電きょうから計画停電、⑤3月14日夕刊・停電予告 首都混乱 東電の対応、二転三転 迷走 遅らす→やるかも→実施せず 首都圏鉄道運休相次ぐ JRなど知らず長蛇の列も 『鉄道、除外を』計画停電で国交省要請、⑥3月15日(火)朝刊・「2号機一時空だき 燃料棒すべて露出 福島第一3号機は水素爆発 死者・不明5000人超 避難55万人、物資不足 初の計画停電実施」、⑦3月16日(水)朝刊・「高レベル放射線観測 4号機も爆発 30㌔圏屋内退避 建屋に8㍍の穴 死者・不明1万人超 関東大震災以来の被害静岡東部震度6強」、⑧3月16日(水)夕刊・「4号機再び火災 福島第一 白煙上がる 真冬の寒さ、続く援助 遺体増え検視難航」、⑨3月17日(木)朝刊・「福島第一原発 3・4号機 注水難航 高圧放水車、ヘリ投入へ 公開写真識者の見方『格納容器は大丈夫』『燃料損傷も』」、⑩3月17日(木)夕刊・「ヘリから3号機に放水 地上からも散水へ 燃料不足が依然課題 東日本大震災発生から7日目 死者4300人超す」。周知の如く、「東日本大地震」は未曾有の大惨事だが、そんな事態に対してマスコミ・メディアはどのように対応・対処すべきか。言うまでもなく、国民が「落ち着いて、冷静に」行動できるような情報を提供することが「最優先」されなければならない。しかるに、その「見出し」や如何に?「首都圏の機能マヒ」だと?「福島原発で爆発」だと?今にも「東日本」全体が震災と放射能汚染によって「壊滅」してしまうような「言い種」ではあるまいか。一方で「落ち着いて冷静に」と言いながら、他方では「大変だ、大変だ!」と不安を煽り続ける、その矛盾を猛省しなければならない、と私は思う。事実、非被災地での「物資買い占め」、被災地(被ばく地域?)への物資輸送拒否などといった「風評被害」が続出しているではないか。通常の生活レベルを「10」とすれば、被災地の生活レベルは「1」、非被災地の生活レベルが「10」のままでよいわけがない。今や、ライフラインや物資が潤沢に保証されている地域・住民こそが、そのレベルを落とし(活動制限・節約し)、被災地・避難者の救済・復興に「協力」しなければならない時なのである。
 はたして、マスコミ・メディアに何ができるか。被災地にとって不可欠なものはライフラインの復旧、生活物資の確保、加えて「正確な情報」であることは言わずもがな、その「正確な情報」とは、国民が「落ち着いて冷静に」行動し、お互いの「安全」を守り合える内容でなければならない。情報の交流は、いわば生命体の「血流」に等しく、社会の「生命線」である。はたして、現在のマスコミ・メディアに、その「生命線」を維持・確保・拡大・充実させるだけの「能力」が備わっているか。今、そのことが問われているのである。
(2011.3.18)