梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

「東京アラート初発令」の《魂胆》

 東京都では新たに34人の感染者が確認され、都知事は「警戒すべき数字。感染防止の徹底を」強調、「東京アラート(警報)」を発令したという。(「東京新聞」朝刊・1面トップ記事)
 「警戒すべき数字」とは、「新規陽性者数」の直近7日間の平均が20人未満なら、次のステップ3まで緩和できるが、6月2日現在は17.7人なので、20人以上にならないように「警戒すべき」だということだろう。
 しかし、カウントすべきは「新規感染者数」ではなく「現在入院者数」(もしくは患者数)の方ではないだろうか。今、感染者数が全国で何人いるか、専門家にも分からない中で、それを数えたところで切りがない。陽性率が5~6%だから国民12億人のうち600万~720万人が感染しているという推定をすれば、現在確認されている1万7千人弱の陽性者が「増え続ける」だけの話でないか。 
 だから、重要なことは「感染者を数える」ことではなく、「感染して発症し、入院が必要な患者数を数える」ことなのだ。
 厚生労働省のホームページによれば、国内の「入院、治療を要する者」の数は、3月26日に1105人、4月2日に2082人、5日に3031人、8日に4021人、10日に5165人、12日に6370人、14日に7095人、16日に8022人、18日に9056人、22日に10226人、25日に11190人、5月4日に12088人(ピーク)、以後はほぼ数日毎に1000人ずつ減少して26日には1950人、6月2日現在では1378人だ。ちなみに感染者数(陽性者数)は16930人だから、その8%に過ぎない。感染者の92%は「入院治療を要しない」軽症または無症者だという「事実」が浮かび上がってくる。
 では、なぜ「感染防止の徹底」が叫ばれるのだろうか。東京都知事に限らず、安倍内閣の面々、専門家会議、テレビ、新聞の報道関係者は、一人残らずマスクを着用、ことさら《感染者数の増減》に国民の目を向けさせようとしている。国民の不安を煽り、危機感を高めることに執着しているのはなぜか。その方が、彼らにとって「都合がよい」からだ。すべては「我が身の保全」のためだろうが、同時に「他者を不幸にしても何の痛みも感じない鈍感な国民」を作り上げ、統制するためでもあろう。
 要するに、彼らは「弱肉強食」「生存競争」をより鮮明に顕在化し、ウィルスを利用して、国民の《ふるい分け》(「自然淘汰」「社会淘汰」)を目指しているのである。
(2020.6.3)