梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

新型コロナウィルス感染・《検証・「非常事態宣言」》

 今日で5月は終わり、明日からは夏だ。今年の春はコロナ禍から身を守る《巣ごもり》に終始したが、そろそろ終了する頃合いだろうか。
 メディアは未だに「新型コロナウィルス」の感染者数を報じているが、感染者が増えることが「望ましい」のか、「望ましくないのか」については、全く触れようとしない。増えることで人々の不安が高まるか、それとも減るか、それは受け取る側の判断に「丸投げ」しているようで、無責任きわまりない。
 要するに、感染者が増えれば増えるほど、感染の終息は早まるという原理を重んじれば、感染は増えた方がよいのであり、感染により死者が《通常以上》に増えるのであれば、感染は増えない方がよいのである。日本を含めてほとんどの国が「感染抑止」策を採ったのに対して、唯一、スウェーデンだけは「感染抑止」策を採らなかった。そしてその結果は・・・?『CLINIC for』というサイト(5月22日)には、以下のような記述がある。(https://www.clinicfor.life/articles/covid-035/)
 〈感染者数はどんどん増え続け5月7日の時点での情報では新型コロナウイルスの感染者数は少なくとも2万4623人、死者数は3040人に達しているとしています。この数値は北欧の中でもずば抜けて高く、人口100万人あたりのスウェーデンの死者数は301人、ノルウェーの40人、デンマークの87人、フィンランドの46人となっています。これだけ感染者数や死者が出ているスウェーデンでは、封鎖措置をしなかった政府の対応に世界各国から否定的な声が上がっています。
 スウェーデン政府は国民に、「発熱やせきなどがあれば自宅療養する、他人とは社会的距離をとる、可能なら在宅勤務する、70歳以上は出来るだけ他人と接触しない、50人超の集会は禁止、店での飲食は席と席の間隔を開ける」などの要請や制約をしています。ですが、学校も中学以下は休校していませんし、人々の行動パターンも変わっているとは言えません。スウェーデン政府は国内の経済活動をストップさせたり都市封鎖をしない代わりにスウェーデン国民は国民一人一人の行動に責任を持つようにと求めました。この方針についてスウェーデン国民は大方賛同しているようです。〉
 ちなみに5月7日時点で、世界各国の死者数は以下の通りである。
・米国73431、・イタリア29684、・スペイン26070、・ドイツ7104、・イラン6486、・フランス25809、英国30076、トルコ3574、日本608、ロシア1625、ブラジル8536。
 スウェーデンの死者数(3040人)は北欧諸国、日本、ロシアより多いが、ロックダウン策を採った英国、フランス、米国、イタリア、スペイン、ドイツ等よりは少ないのだ。
《だから》どのような対策を講じても、結果に大差はないとも言えるのではないか。
 いずれにせよ、コロナ禍による日本の被害は、死者数が少ない割には甚大だ。外出自粛、全校休校、営業自粛、イベント、興業、大会中止等々で、経済的なダメージを受けた人々の数は、感染者数の比ではないだろう。いわば為政者(政府・首長)の施策によって生じた被害である。それで、そのおかげで、国民の命が(疫病から)守られた、と断言できるか。
 死者数が他国に比べて少なければ少ないほど、今回の「非常事態宣言」の妥当性・信頼性に《怪しさ》が増してくるのである。
(2020.5.31)