梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

大衆演劇・劇団素描「劇団夢舞俱羅」(座長・高峰調士)

【劇団夢舞倶羅】(座長・高峰調士)〈平成21年11月公演・千代田ラドン温泉センター〉                                 前回の見聞では、大座長・高峰調士(前・南條時宏)の出演が、舞踊ショーのラスト前、個人舞踊(年輪・唄北島三郎)のみだったので、たいそうさびしい思いをしたが、今回は芝居の敵役・丸子一家の親分(外題「安倍川の血煙」)、舞踊ショーでも①組舞踊(さんさしぐれ)、②相舞踊(お初・唄島津亜矢、共演・南條なほみ)、③個人舞踊(音曲は失念)と「出ずっぱり」の大サービスといった感じで、おおいに満足した。大座長は当年とって67歳、「長谷川正二郎劇団」出身とやらで、劇団の芸風は「関東風」、芝居も舞踊も「あっさり味」が特長である。昔(昭和40年代)、千住寿劇場で観たころの「雰囲気」が、そこはかとなく漂っていた。とりわけ、相舞踊「お初」は、曽根崎心中が題材、(練るに練り上げられた)67歳の徳兵衛、30歳代の(脂ののりきった)お初が醸し出す、情死行の「色香」は格別、関西風では観られない「粋な舞台」に、私の涙は止まらなかった。そうなんだ、これなんだ、これこそが「関東風」の《至芸》なんだ。観客は二十名そこそこ、でも舞台は燦然と輝いているのである。
 大座長・高峰調士の「存在」が、いかに大きく重たいものであるかを、改めて「思い知らされた」次第であったが、劇団の推進は、松平涼、その長男・松平龍昇(副座長)、中堅・浮世しのぶ、女優・南條なほみらの「頑張り」に託されている。皆、それぞれに「よい味」を出しているので、あとはチームワーク次第というところであろうか。若手の松平龍昇は、元気いっぱい、精一杯の舞台を務めているが「やや力が入りすぎ」、もっと力を抜いて緩急・メリハリの表情を描出できれば、と思うのだが・・・。
 さて、千代田ラドン温泉センターは、ただの健康ランド、スーパー銭湯ではない。悪性腫瘍(癌)をはじめ、様々な「難病」に効くラジウム岩盤浴の施設を備えている。同様の施設としては、(東日本では)秋田・玉川温泉、福島(三春)・やすらぎ霊泉が有名だが、私は、「ここが一番」だと思う。玉川温泉もやすらぎ霊泉も、「西洋医学」で見離された難病患者で「ごったがえしている」のが実情、いずれも「商魂たくましく」「医は算術」といった景色がほのみえる。しかし、ここ千代田ラドン温泉センターは「別格」である。1回の入館料(1500円)だけで、ラジウム岩盤浴、ラドン温泉は(午前10時から午後10時まで)「入り放題」、岩盤浴場も、①男女兼用(温度低め)、②男女兼用(温度高め)、③女性専用(温度高め)と「至れり尽くせり」で、各室が満員になることは、まずない。入浴客(湯治客)は、何の気兼ねもなく「ゆっくりと」「思う存分」治療に専念できる、といった仕掛けで、そのうえ「大衆演劇」の「元気」がもらえるとすれば、難病患者にとっては、まさに「この世の天国」、「桃源郷」そのものだと断言できるのである。
 ちなみに、案内パンフレットには、以下のような説明書きも載せられている。〈「放射線ホルミシスという考え方」 地球上の生き物は、植物であれ、動物であれ、太古の昔から自然放射線を浴びて進化してきました。つまり、自然放射線に適応し、それを体によいものとして受けとめ、うまくつきあってきたのです。ある研究では、自然放射線をまったく遮断した環境のなかでは、生き物は生きていけないという報告もあります。「たくさんの量だと生物に害を及ぼす放射線が、ごく微量ならば、逆に、生物に有益な効果をもたらす」●微量放射線は、“免疫の司令塔”ヘルパーT細胞を活性化する。●細胞のガン化も防いでくれるというP53遺伝子も活性化する。●万病の元凶・活性酸素を抑える酵素を増加させる。●細胞膜を若返らせ、アンチエイジング効果も期待できる〉 
 もはや信じる他はない、と私は思う。
(2009.11.16)